明るみに出る聖闘士の力

「私がファブレに来た時の事を覚えていらっしゃいますか?ルーク様」
「あ・・・まぁ、そりゃあな・・・」
「・・・あの時の事を私は今でも思い出せます。今より小さなその姿から私の事を望むあの姿を・・・その時に私は決めたのです。貴方の側にいたいと。そしてその気持ちは今となっても変わりはありません。『本物のルーク=フォン=ファブレ』はアッシュだと言われたとて気持ちは変わりません・・・私が誓いを立てたのは他の誰でもない貴方に、なのですから」
「!!・・・カノン、カノォォォン!」
‘ギュッ’
そのままの笑みでカノンは続ける、自分は『本物のルーク』という名にではなくルークという個人に向けての想いがあるからこそ今こうやってここにいるのだと・・・その嘘偽りのない自身に向けられる純粋で誠実な想いにルークは目に涙を溢れさせ、カノンの胸に飛び付いて抱き付いた。
「こんな・・・こんな俺に一緒にいてくれるのか・・・?」
「はい、そう申し上げています」
「っ・・・あり、がとう、カノン・・・!」
それで胸元から聞こえる確認の声に慈愛を込めて頭を撫でながら答えるカノンに、更にルークの声は涙に震えた・・・今までの話を聞いていて不安で仕方なかったのだろう。自分が偽物であることやその他諸々を含めてどうなるか分からないことが。だがカノンは変わらず自分の事を見てくれると、そう理解した為にルークは緊張から解放されたのだ。自分が誰からも見捨てられるのではないかという不安から。
「・・・フッ、随分と美しい主従愛だな」
「・・・何を仰りたいのでしょうか、謡将?」
・・・だがそんなルークの気持ちなど知らぬとばかりにヴァンが皮肉げな笑みと言葉をかけてきたことに、カノンは冷ややかな表情と声をそちらに向ける。
「お前が何を言おうとそれがレプリカであることに変わりはない。愚かなレプリカルークであることにはな」
「何を「うっ!?うわぁっ・・・!」どうされたのですか、ルーク様・・・!?」
そしてすぐにルークをレプリカと蔑む言葉を向けてきた事にカノンは反論しようとしたが、自身の胸にいたルークが驚くような声を上げて身を離した事に目を見開き何事かを問う。周りにいたアイオロス達も何なのかと目を見開いていたが、ディストのみ恐怖に顔を青くしていた。
「フフ、本来ならパッセージリングを壊すために発動させようと思っていたがこうなればもうどうでもいい・・・そのレプリカに刷り込ませておいた暗示を発動させた。ここからではパッセージリングを破壊出来るかは分からんが、私の制御のない超振動が暴走して発動すればこの辺り一帯は確実に消滅する・・・私達共々死ぬがいい、カノン!」
「テメェやけになりやがったかヴァン!?」
一人冷静なヴァンはルークの暴走を招いた事を明かした上で最後だと叫び、アッシュが正気かと叫ぶ。
「カ、カノン・・・体が、勝手に動く・・・止められない・・・!」
その傍らでルークが泣きそうに不安に満ちた声で両手を持ち上げていき、第七音素を集中させていく・・・ヴァンの言葉通りならルークはこのまま超振動を発動させ、制御の効かないそれは爆弾のように爆発する形で辺り一面を消滅させる可能性が高いのだろう。
「・・・ルーク様、その体の動きに逆らわないでください。体にも精神にも負担が来ます」
「で、でも超振動を止めないと皆・・・!」
「来い双子座の聖衣!」
‘カシャンッ、カシャカシャ’
「・・・っ!」
カノンはあえて逆らうなと言うが精一杯自分なりにどうにかしたいとルークは漏らすが、いきなりカノンが双子座の聖衣を虚空から呼び出しその身を包ませた姿に声を無くした。
「・・・私が超振動を相殺します。私を信頼して今はその衝動に逆らわずにいてください」
「っ・・・わかった・・・あぁぁっ!」
・・・先程の身を包み込み優しさに満ちた言葉と違い、力強さに満ちた優しい言葉だった。
聖衣をまとうカノンからの真剣な言葉にルークも頷くが、操られた体が超振動の準備を終えたのか大量の第七音素がその両手に集まり上へと持ち上がる・・・それと同時にカノンも両手を交差させ、頭の上へと持ち上げていた。



「・・・ギャラクシアンエクスプロージョン!」



・・・そして次の瞬間、ルークの両手から超振動が放たれたと同時にカノンも爆発的に高めた小宇宙と共に双子座最強の技を放った。銀河さえ爆砕する、双子座最強の技を。









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