明るみに出る聖闘士の力

「それでは魔界に外殻大地を降ろせるかどうかだが、これはどうだ?」
「・・・それに関しては理論上ではありますが、可能ではあると予想はついてます。ただその為には情報が足りないんです」
「足りない?」
「簡単に言うならそれが出来ると確信が出来るだけの情報です。私はあくまで可能性程度に研究するように言われただけで詳しく追及はしませんでしたし、それを研究するにしたって時間がかかることから理論を確立させるだけでも数ヶ月単位は最低でも必要なんです。外殻大地を魔界に降ろすだけならなんとでもなるでしょうが、魔界の液状化した大地をどうにかするために一から研究をしろと言われたらね」
「・・・そうか」
続けてカノンは外殻大地の降下について聞くとディストはどうしても時間が多大に必要だと不安がある返答をするが、納得する声には焦りなどなくむしろ確信めいた響きがあった。
「ど、どうしたのですか?」
「いや、お前の様子を見て感じた・・・魔界のその液状化した大地をどうにかする方法について既に検討がついているのではないかとな」
「っ・・・な、何故そう思うんですか?」
「一から研究するならと言ったな、お前は。それで俺にそうしろと言われたら面倒だとかそういった空気がお前の言葉にはなかった・・・だから思ったのだ。何かかくし球と言うか既にお前は確信を持っているのではないかとな」
「っ・・・鋭いですね、その通りですよ」
そんな声に動揺しながら伺いの声を立てるディストだが、既に知っているのだろうとカノンが言い放つと正解だと驚きを抑えながら肯定する。
「とはいえ正確には私が既にそれを知っているという訳ではありません。ダアトの中で障気を抑える為の研究をした昔の研究書を見つけて軽く読んだ事を思い出し、それがあればイケると思ったのですよ」
「昔の研究書?それで障気をどうにか出来ると言うのなら何故使われなかったんだ?」
「その研究書はダアトの中でもかなり奥まった所にあって禁書扱いにされて放置されていたんですよ。そしてその研究書に限らず言えることですが、ダアトは預言に沿ってないとされる物を徴発したりしてたそうです。ただ徴発したはいいもののどう扱っていいものか分からず使ってない本棚にでも入れておけばいい、とでも思っていたのでしょうね・・・奥まった所にこそありはしましたが、特に隠されてもいませんでしたから」
「随分とずさんな物だな、その管理体制は・・・本来ならそのように封印すべきと思ったものは誰にも見つからないようにするか、いっそ誰にも使えないようにするために焼却などして闇に葬るべきだと思うのだが・・・」
「その辺りは想像でしかありませんが半ば何が何かを分からず徴発していたというのも大きいと思います。その研究書以外にも専門的で一般人には見分けがつかないものはいっぱいありましたし、同時期に徴発されただろう物でも特に目ぼしいところのない本もいくつかありましたからずさんと言われても当然でしょうね。そしてそう言った禁書などの徴発は一時期相当だったとお聞きしましたから、それらをちゃんと分ける手間も時間も相当面倒だっただろう事も想像出来ます」
「だからこそその研究書も処分されることなく残っていたというわけか・・・皮肉な物だな。ずさんであったが故に、そのようなことになるとは・・・」
それでその心当たりとも言える研究書について申し上げるディストにカミュが反応し話を聞いていくが、その研究書の存在について深く話していく内に呆れを含んだ声を上げる。この辺りは書物が好きなカミュとしては複雑なのだろう。保存すべき物がちゃんと保存されずにいたのに粗雑にされていたからこそ研究書が残ったことに。







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