双子の片割れと三人の聖闘士の介入

「お待たせして申し訳ありませんでした、ルーク様。このカノン、ルーク様のお迎えにあがりました」
「あぁ、ご苦労・・・って言いたい所だけど、すごく来るの早くないか?ここマルクトだぞ?」
「緊急事態でしたので私の友人であるこちらの三人に協力してもらいました。こちらの三人は独自のルートを持っていてルーク様の行方が判明したのち、そのルートを使い全速力でタタル渓谷まで参ったのですが途中で辻馬車がローテルロー橋方面に向かわれたので急いで方向転換をしました・・・あのタルタロスに追われていた辻馬車がローテルロー橋を爆破するまでに間に合わなければ、今この場に私どもは来れなかったやもしれません」
「え・・・あの時カノン達も近くにいたのか?・・・って事は相当早くここに来たんだな、お前達」
「恐れ入ります」
その体勢から執事らしく迎えに来たと口上を述べるカノンにルークは礼を言いかけるも、やはり聖闘士の早さには疑問が生じていたようで早すぎないかと問う。だがそこは抜かりなく三人の紹介をしながら三人のおかげと言いつつローテルロー橋爆破という目撃者以外に発言しようのない事実を入れ込んだカノンに、ルークも納得せざるを得ず素直に感心した声を上げた。
「とは言えローテルロー橋が爆破された以上、バチカルに向かうにはこのエンゲーブから南下した所にある国境のカイツールを通り、更に先にある港からケセドニアに向かう船に乗る以外に手立てはありません。それまでは少々長い旅路になりますが、我慢されてください」
「う・・・まぁそれしかないなら我慢するしかないか。それにカノンが一緒にいてくれるなら、そこの女に連れ回されるよりは全然マシだし・・・」
しかしこれからは聖闘士としての力は見せるわけにはいかないカノンがこれから取る普通の帰還ルートを口にしていけば、微妙そうに頭をかきながらもティアを見てカノンがいるならといいかと返す。
「・・・ルーク様、そもそもの事をお聞きしますが、何故この女と行動を共にしていたのですか?」
「大方カノンに言ってたような感じだよ。謡将を狙っていただけだけど俺を巻き込んでしまったのは悪かった。だから訳は言わないけど責任は感じてるからバチカルに連れて帰るってな。けど偉そうにタメ口で物を言うばかりか魔物が襲ってくりゃ前衛をしろだ詠唱中は守れだなんだ言うばっかしで、更に言えば首都行きだっていうから大して何も聞かずに辻馬車に乗りゃそれがグランコクマ行きだって後でわかるし・・・まぁこれは俺もバチカルに行くのか聞かなかったのも迂闊だって思ったけどな」
「「「「・・・」」」」
そんなルークにそもそも何故二人で今まで一緒にいたのかを問えば、そこから出るわ出るわの問題行動のオンパレード・・・最後は自身の過失もあるとルークはまいったように言うが、四人はその有り得なさに揃って眉間に深いシワを刻んでいた。
「・・・ルーク様、魔物とは戦われたのですか?」
「いや、全部逃げた。過失だ訳を言えないだなんて言う女に偉そうに前衛をやれなんて言われてもやる気起きなかったし、後ろから狙われたらなんて考えたらゾッとしたんだ。目的ハッキリしてない上に、もしかしたら実は俺が狙いで殺される可能性もあるんじゃないかって思ったからな・・・だから臆病だなんだって言われてもお前の盾になるくらいなら逃げるって言ったんだよ。俺も命は惜しかったからな」
「それで正解です、ルーク様」
それでも聞かねばならないと今度は魔物と戦ったのかと重く聞くカノンだったが、迷わず逃げたと命を大事にしてティアを信じず行動したルークに安心したよう正解だと告げる・・・敵の敵は味方とよく言うが、自己申告で自分は味方などと言われても簡単に信用など出来るはずもない。ましてや自分に被害を与えた相手になどそうそうは出来るはずもない。まだ共通の敵を持つ敵の敵なら利用くらいは互いに出来ると利害関係で結び付きが出来るだけマシというもの・・・信じられない者といる中で冷静な判断を下せたその事に、カノンは命が助かったことも含め二重の意味で安心していた。







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