明るみに出る聖闘士の力

ヴァンとジェイドに見えるよう抑えめに走るカノン達だが、その速度は常人からしてみれば常軌を遥かに逸している速度だ。
「俺はアッシュを抑える・・・アイオロスにデスマスクは残りの六神将に神託の盾を抑え、カミュはブリッジを抑えタルタロスの動きを止めないように制御してくれ」
「了解だ・・・では、行くぞ!」
‘ドンッ・・・トンッ’
そんな速度で走りながらカノンが出す指示にアイオロスが頷いた後、四人は目の前に近付いたタルタロスの甲板へと・・・一足飛びで飛び上がり、神託の盾のいる場へと着地した。
「なっ!?き、貴様らは・・・!」
「寝てな雑魚が!」
‘ズムッ!’
「がっ・・・!?」
そんな登場に近くにいた神託の盾が動揺に声を上げるが、デスマスクが有無を言わさず腹に拳を叩き込んだ事で苦悶の声を上げ地面に倒れ付した。
「では後は頼むぞ!」
「あぁ行ってこい、こちらもすぐに済ませる!」
その攻撃を見てカノンは後をアイオロス達に任せ、常人には目にも止まらぬスピードで場を離れる。回りにいた神託の盾が突如として消えたようなカノンの姿に呆然とする形で・・・









‘ガチャッ’
「・・・っ、テメェは・・・!」
「大人しくここで待っていたようだな、アッシュ」
「テメェが・・・あの時の奴だったって言うのか・・・!?」
「そうだ。あの場では面倒になるだろうと言いはしなかったがな」
・・・そしてすぐにカノンはアッシュのいる部屋に辿り着き、ドアを開ける。通路にいた神託の盾を軒並み撃退した後に。
アッシュはカノンの以前と違い顔の見える黄金聖衣姿に目を剥いて驚き、対するカノンは淡々と返す・・・が、その姿に怒りを瞬時に沸かせたアッシュはすぐさま剣に手をかける。
‘パッ’
「・・・なんのつもりだ?」
「ぐっ、離しやがれ!」
「・・・もう一度聞くぞ、なんのつもりだ?返答次第ではこのまま握り潰しても俺は構わんが」
「があぁぁぁぁっ!?」
・・・だが剣はアッシュの手に握られる事はなかった、カノンが瞬時に距離を詰めその手を掴み上げた為に。
その暴挙とも呼べる行動にカノンは静かにその訳を問うが、全く素直に返す様子がないアッシュの怒声に再度問い返す。掴み上げた手首をミシミシと音が鳴るほどに握って、アッシュに苦悶の叫びをあげさせながら。
「・・・ぐっ!テメェが、気に食わなかったからだ!人の所に来るだけ来て、言うだけ言ってさっさと出ていきやがったテメェがな!」
「だから俺に攻撃を仕掛けた、か・・・短気なのはいただけんが、一応理由は聞いたことだ。手は離してやるが、次に襲い掛かろうとしたなら骨の二か三本は覚悟することだな」
「っ・・・チィッ・・・!」
手首の痛みにたまらずアッシュは早口で気に入らないと理由を明らかにするが、カノンは一応はとまた襲った場合の事も言い含め手を離すと息を呑み手首を抑えながらも精一杯の悪態の舌打ちを鳴らす。
「さて・・・こうやって俺がここに来たわけだが、お前を迎えに来ると共に神託の盾を制圧するためだ。他の場では今頃アイオロス達により神託の盾は無力化されていることだろう」
「・・・フン、随分と簡単に言いやがるがそんなことが出来るわけがないだろうが」
「俺が何のためにこの姿でここに来たと思っている。それにお前も知っているはずだ。今の俺と同じような姿をした者が何人かいることは」
「・・・っ!」
そんな姿に迎えに来た上でタルタロスを抑えに来たとカノンが言えばアッシュは出来るわけがないと嘲るように返すが、他の黄金聖衣の事を告げられハッと目を見開く。
「とは言えすぐに信じられないと言うのがお前の気持ちだろう・・・アイオロス達の方に向かうぞ、証拠を見せてやる。だが途中でいらんことをしたなら、分かっているだろうな?」
「っ・・・チッ、行くならさっさと行くぞ」
そして場を離れようと懲りずに敵対心を向けてきた場合の処置を暗に言い含めたカノンに、またアッシュは精一杯の悪態をついた上でその後を付いていく。明らかにカノンに負けていると認めたくないと思っている事を現しているように・・・







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