影を動く聖闘士の躍進

『安心しているところですまないが、ここに来たのはその事だけを伝えに来たのではない。今アクゼリュスにはもう街中に人はいないのだが、その状態で住民の待機している場所に来てもらうには無理がある。だから私はキムラスカ側からアクゼリュスへ通じる道であるデオ峠で待っているから、お前達は適当に会話を合わせてくれ。それで私が道案内をすると伝える』
『分かったけど・・・どうしてここまで来たんだ、アフロディーテ?別にここまで来る必要はねーだろ。デオ峠付近で通信をすりゃ事足りただろうし』
『・・・その件に関してだがシャカから連絡が来た。アテナよりの伝言を伝えられる形でな。その時私はアクゼリュスの様子を尋ねられ、その伝言の事を聞いたから私が伝えに行くと切り出したのだ。ちょうどいいと思ってな』
『アテナから?・・・何かあまりいい予感がしないのだが・・・』
それでアフロディーテの報告も終わるのだがデスマスクのそんなすぐには必要ないのではとの指摘に、伝言があると言い出したことにカノンが不安げな言葉を漏らす。
『何、そう大したことではない。事態が大きくなっていると言うのはシャカの話から聞いているから、自分の力が必要ならば遠慮なく私を呼んでくれて構わないからとの事だそうだ』
『いや・・・それは大したことと言うのだ、アフロディーテ・・・あの方が直接来るなど、何を考えられているのだ・・・!』
『それに関してだがアテナ自身も気になられている事があるらしい。主に障気の事もだが預言の事がな』
『預言・・・?』
アフロディーテは何事もないといったように答えるが、カノンはアテナの来訪という立場を気にしないような考えに憤りの声を上げる。が、預言が気になると言った事に疑問符を浮かべる。
『アテナからの話ではカノン・・・お前の言ったことから預言と言うものに最初から疑問を抱いていたそうだ。確か第七音素を介して人や星の未来を詠む、のだったか?』
『あぁ、そうだが・・・』
『本来なら人や星の命運を先に知れるような事が出来るのはそれこそ神くらい、それも時の神と呼ばれるクロノスくらいだということだそうだ。しかしその気になれば他の神でも人の未来くらいなら知ることは出来るそうだが、誰もそうしようとしなかった・・・それは何故か分かるか?』
『・・・神にとって人間の存在が取るに足らないちっぽけな物だから、か?』
『それもある・・・が、最も大きな理由はまた別にある。それは』



『人や星の未来を詠むには星の命を削らなければならないから、だそうだ』



『何っ・・・!?』
それでアフロディーテからアテナの言葉の代弁を聞いていたカノンだが、星の命を削るとの言葉に衝撃を受け声を上げた。
『アテナの話によれば人や星の命運と言うものはあらかた決まっているそうだ。ただそれは絶対ではなく自らの力で命運を変えることも可能らしいが、それはここでは置いておく・・・重要なのはそれは星の記憶として刻みついた物であり、星を生命として支えてる力でもあり星の命とも言えるものだとのことだ。それでその星で産まれた者も、その記憶に知らず知らず従って生涯を終えるらしい』
『・・・そしてそれを言葉として現したのが預言、だというのか・・・?』
『そうだろう。それで神々がそれを頼りにしなかった理由はその力を使えば使うほどに星が死ぬ事を理解していたからこそらしい。その星の未来を削る命のエネルギーを抽出すればするほどな・・・だがこの世界の人々はそんな星の記憶であり、命を使っている。預言という形で日々浪費する形でだ』
『待て、アフロディーテ・・・と言うことはこの世界はどんどん死に向かっていると言うのか?預言にすがればすがるほどに・・・』
『アテナはそう考えているようだ。その第七音素・・・つまりは星の命を使うほどにな』
『っ・・・!』
更に尚も続くアフロディーテのアテナの言葉の代弁にたまらずカノンは息を呑んだ、この星自体が命の危機に瀕していると聞き。










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