影を動く聖闘士の躍進

「これは先程の話同様ここだけの話にしていただきたいのですが、ナタリア様は度々ファブレへと来訪してきました。来る予定のない時にまで・・・本来でしたらナタリア様に遠慮していただくような言葉をかけれるのはファブレでは公爵様に夫人以外にはおられないのですが、その度にお二方に対応していただくのは無理がございますので私が公爵様に相談いたしたのです。ナタリア様の事を・・・そうしましたら公爵様もその事態にあまり快く思われていなかったのか、すぐに対応すると陛下に話をしに行かれました。そしてそう思っていたのは陛下も同様だったのでしょう・・・すぐに陛下より許可が私に下りました。ナタリア様が王女として如何なものかと思える事をしたなら立場を気にせず諌めて糺せ・・・その時に限り私には罰は与えぬからと」
「・・・成程、ナタリア様を止めるための役割として許可を得ていたと言うことですか。そしてその事はナタリア様にも告げられていたからこそ、貴方に王女としての権限を振りかざせなかったと・・・」
「あの方は以前に私が王女だということを理解していないのかと権限を活用しようとした時がありましたが、その時ルーク様が私を庇い証言をしたこともあってナタリア様は陛下より厳しい言葉をかけられたそうです。予定にないファブレへの来訪をしたばかりかその事を突かれて逆上するとは何事か!・・・といったような言葉を。そして以降はファブレ邸への来訪自体は無くなりませんでしたが、王女だからと言うことは無くなりました」
「・・・むぅ・・・なんと言っていいか、そこまで聞くとわかりませんな・・・」
「この場だけの話ですのであまり気にされないでください。それに今の話を外でしたならそれこそ王族を侮辱したものとして逃れられない罰を与えられかねませんので、ご注意を」
「っ・・・そうですね。今の話は心の中だけに留めておきます」
そんな姿にカノンがナタリアがファブレ邸で起こしたことや、いかな処置を下されたのかとエピソードを語ると責任者も反応に困り唸る。だが再度この場だけの話と今の事を漏らした場合の釘を刺すような事を言うカノンに、責任者は息を呑んで重く頷く。今の状態ですら相当にヒヤヒヤした状態であったというのに、これ以上下手に巻き込まれたくないと。
「ただ、今ナタリア様は意気消沈されていますが再度我々と共にアクゼリュスに向かわんと抜け出してこないとも限りません。ですのでまだ船の出発までは時間がかかると思われますのでナタリア様にお伝えするようにしてください・・・事の次第は陛下にお伝えするのでまた逃げ出すような事があれば、今度は釈明の余地を陛下が与えるような事態には流石になり得なくなる・・・と」
「・・・分かりました、そのようにお伝えしましょう。それとお二方はすぐにルーク様の元に向かわれてください。バチカルへの報告でしたら私が担当しますので」
「ありがとうございます・・・では失礼します」
その上で事後対応もしてほしいと頼むカノンに今度は責任者も自主的に動くと言うことも付け加え了承し、早速頭を下げて二人は場を後にしていく・・・






『・・・しかし困ったものだな、あの姫君は。流石にあそこまでの行動を取るとは思っていなかったぞ』
『・・・正直俺もだ。いくら向こう見ずな方だと分かっていても、あそこまでの事を平然とするとはな・・・』
・・・それでケセドニアの街中を歩いて船着き場に向かう二人は小宇宙の通信で呆れを浮かべながら会話する。話の中身を聞かれると明らかにまずいものであるために誰にも聞かれないようにする形で。
『ただ、あの責任者の姿を見て一つ分からないことが増えた』
『・・・何故数日前に城を出たはずのナタリアを連れ戻すよう、バチカルから指示が来てないのか・・・だな?』
『その通りだ』
そんな中でカミュが分からないことと言いカノンはそれを即座に言い当てた、ナタリアを戻すための動きがなかったことを。







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