影を動く聖闘士の躍進

「話を続けますがそんな事態になったとしてもそれがナタリア様の評価が上がることはあっても、結局ナタリア様を止められなかった事実に違いはございません。むしろ陛下のメンツを潰してしまう原因の一端を担ったとお二方は苛烈な罰を与えられる可能性が高いかと思われます」
「そ、そのようなこと私が許しません!お父様も私が言えば・・・!」
「ではどのように説明されるのですか?城から抜け出したのは自分の責任だからお二方は悪くないとでもおっしゃりますか?それとも自分は和平を成功させたのだから細かい事は気にするなとでもおっしゃるのですか?・・・いえ、ナタリア様がどのようにおっしゃった所でインゴベルト陛下側から返ってくる反応は共通してこのようなものになるかと思われます。『独断専行を行った事実を誤魔化し手柄も名誉も殿下に向かうように処置を施した、なのにその独断専行を悪びれもしないばかりか不当だと言うのは何事か!』・・・という反応が」
「なっ!?何故そんな・・・!?」
「流石に陛下もそこまでになれば殿下の反抗を許容出来なくなるからです。今の時点ですら殿下は陛下の意向に背いてケセドニアにいる状態で、更に成功したからと言っても結局の所で陛下側の内心としては親子としての感情と見ても臣下としての形で見ても、殿下は自身の考えを聞こうともしない存在と言うことになります・・・そこで更に反抗をされればいかに陛下と言えど厳罰を与えざるを得なくなるでしょう。お二方だけでなくナタリア様にも」
「っ・・・で、ですが私は和平を成功させるというのに、そのようなことが許されるはずが・・・」
「お忘れでしょうか?あくまでその和平の成功という結果もキムラスカが殿下の独断専行を誤魔化すという形で持って綺麗に見せれるようにした状態・・・すなわちナタリア様が陛下の意向に背いた事実をないものとしたからこそ有り得る物になるのです。そしてお二方を庇うように先程のようなことを申されたなら、それらを突き付けられた瞬間にいかに殿下と言えども黙らざるを得なくなるでしょう・・・ナタリア様が自身の力のみで打ち立てたと思っていた功績が陛下を始めとした人々の作り出した虚構の上で成り立っていたことを知らされ、尚も自分の意見を押し通そうとしたなら陛下により強制的に発言権を奪われる形で。そしてそうなればもうナタリア様に政治に関わる権限は与えられないでしょう・・・それだけの事をナタリア様はキムラスカに父君であらせられるインゴベルト陛下にしてしまったのですから、自分は許されるし許してくれると相手に甘えられる限度を越えてしまう形で」
「っ!?・・・そ、そんな・・・お、お父様は私のやることは正しい・・・そ、そう言ってくれるはず・・・ですわ・・・」
そしていかにインゴベルトのメンツを潰すかに自身が都合のいいことを言っているのかをカノンに告げられていったナタリアは最初こそなんとか反論していったものの、最後には甘えと言われた事にとうとう愕然とした表情になってぶつぶつと言葉を漏らすだけになった。
「・・・ではすみませんがバチカルまで殿下を送り出す船を用意していただいてよろしいでしょうか?今のナタリア様なら大人しくお帰りいただく事は可能かと思われます」
「っ・・・えぇ、すみません・・・すまないが船の手配と兵士を呼んできてくれ、すぐにな」
「は、はい・・・」
しばらくは再起出来ない程凹ませるだけ凹ませたとそう判断して、カノンが後の処置を頼むよう声をかけると責任者にその補佐は呆然とした状態から動き出す。






・・・そしてすぐにナタリアは部屋に来た兵士達に囲まれ、部屋を後にしていった。それこそ動揺で何も出来ない状態で。
「・・・いや、助かりました。私ではナタリア様に帰っていただくのに相当に骨が折れていたでしょう。ですがナタリア様にあそこまで言えるとは・・・執事という立場の者とは思えない胆力ですな」
「いえ、本来なら執事という立場の私があのようなことなど申せません・・・あそこまで私が殿下に申し上げる事が出来たのは公爵様に陛下よりの許可があったためです」
「公爵様と陛下?」
補佐がナタリアを送るためにいなくなり三人になった場に責任者が感心の声を向けてくるが、カノンが首を横に振りながら答えた言葉に首を傾げる。










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