「こちらの方々はこの領事館の責任者とその補佐をされているお二人です。カノンより頼まれ事情を話してこちらにおいでいただきました」
「・・・ナタリア様・・・」
「な、なんですか・・・その目は・・・？」
カミュがその視線に丁寧に二人の紹介をするが、責任者と呼ばれた者の厳しい目線にたまらずナタリアは萎縮する。
「・・・話はお聞きしました・・・ナタリア様、貴女にはバチカルに戻っていただきます」
「なっ！？い、いきなり何を・・・！？」
「いきなりも何もございません。王女殿下ともあろうお方が、お父上であられるインゴベルト陛下の言葉に逆らってまでこのケセドニアにまで来たこと・・・そのようなことを見過ごしてしまうというのは許されることではありません」
「何を言うのですか！私はマルクトとの和平を成功させる為にアクゼリュスに向かうのです！その邪魔をすることなど許しませんわよ！」
「・・・っ・・・」
「・・・この場は私にお任せください」
それで意を決して静かに帰ってもらうと言う責任者に最初は面食らっていたが、すぐに威勢を取り戻して反論してくるナタリアに今度は責任者が息を呑む。その姿を見かねたカノンが一歩前に出る。
「・・・ナタリア様。その様子では領事館に自身が来られている事をお知らせしていなかったようですが、このように事情を知ったお二人が今ナタリア様を見過ごしアクゼリュスに向かわせたならどのような末路を迎えるか・・・お分かりになりますか？」
「・・・末、路・・・何故そのような不穏な言葉を・・・？」
「言葉通りです。ナタリア様がバチカルを抜け出したのにそれを止めることが出来なかったのなら、お二人は受けなければならないのです。キムラスカに仕える臣下としてあるまじき行動を取ったとする罰を」
「っ・・・そんな、何故そのようなことになるのですか・・・？私がアクゼリュスに向かえばより良く和平がまとまるというのに・・・」
「貴女が向かえばより良く、というようになったとしてもその手柄はあくまでも貴女の手柄でしかありません。お二人が行ったことは何もせずナタリア様を見過ごしてしまったというだけの事になります・・・つまり手柄のないお二人が迎えるのはインゴベルト陛下の意向を汲むことがなかったという叱咤及び、その行為に対する罰という結末です」
「なっ・・・！？」
そしてどのように責任者達が罰を受けるのか、それらを段階を踏み話していくカノンに徐々に不安になっていったナタリアは最後には絶句した。だがまだ核心を突いてないカノンは淡々と続きを述べていく。
「そしてこの件に関して言えばナタリア様がお二人を擁護する事は許されません。むしろ擁護してしまえばナタリア様が行った行動すら自身で否定することになります」
「・・・ど、どういう事なのですか・・・？」
「このようなことを言ってしまうのはキムラスカの内政の批判にもなりかねませんのでこの場だけの話として胸の内に留めておいていただきたいのですが、ナタリア様の功績でより和平がうまくいったならキムラスカはナタリア様の行動を元から付いていかせた物と誤魔化さねば事態が面倒になります。そうしなければインゴベルト陛下の判断は間違っていてナタリア様の判断が正しかったと、そのような噂が立ちかねないために。そこでお聞きしますが、ナタリア様もインゴベルト陛下の面子を汚すような事態は避けたいのではないですか？」
「それは・・・確かにそうですが、嘘をついてまでなど・・・」
「今現在、ナタリア様はインゴベルト陛下の言いつけに背いてまでこのケセドニアにまで来ているということをお忘れですか？この事実が公表されるということは、陛下の判断が間違っていたとより一層強めるエピソードになるのですよ。バチカルから抜け出してまでなどという決断をナタリア様にさせてしまったとの声に繋がるのですから」
「っ！？」
それで話は二人の処遇からキムラスカが取るだろう処置についてになるが国としての体裁を取るだろう仮定に正直であることが美徳だと思うナタリアは問いかけに釈然としないと首を傾げるが、そのナタリア自身がインゴベルトをおとしめると告げられ一気に息を詰まらせた。そんなこと考えてなかったと一目で明かす形で。







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