双子の片割れと三人の聖闘士の介入

「その話は別の場所でしましょう、こちらでするには多少込み入った話になります」
「ちょっと、何を勝手に・・・」
「・・・いいから黙って来い。俺はファブレの関係者だ」
「っ!?・・・わかったわ」
それで丁寧に話を進めようと場所を変えようとカノンは言ったが、何故だか敵意を持って返されそうになる。そのまともに話を聞きそうにない空気を見て取りカノンは静かに耳打ちをしたのだが、タメ口で低く落とし力の多大に込められた声に女は一瞬驚きその声に反射的に了承を返した。
「・・・では少しルーク様もよろしいですか?屋敷を飛ばれてからの事を詳しくお聞きしたいのですが・・・」
「あぁ、わかった」
その上でルークにもうやうやしく確認を取るカノンに、即答で頷く。
「ではこちらに・・・」
当事者二人の許可(というよりはルークの許可)が取れた所でカノンは二人とデスマスク達三人を丁寧に先導するよう引き連れ、その場を後にしていった・・・






・・・そしてカノンが場を移した先は村の外れでもうほぼ村の外と言っていいような場所で、滅多に人の来ないような場所である。
「・・・何かしら、イチイチこんな場所にまで来るだなんて。話なら村の中ですればいいことじゃない」
「・・・ルーク様。少々お目汚しな光景を作ることになりますので、その三人の後ろに控えられてください」
「えっ?・・・あぁわかった」
そこで一対一の構図で向き合うカノンと女・・・ティアだったが、偉そうな口調を一切崩さずに文句を言ってくる。その姿にカノンはファブレでの日常ではあまり見せない触れたら切れそうな程の鋭い視線をティアに向けながら、口調は丁寧にルークに三人の後ろに下がるように願い出る。常日頃にないカノンの様子にルークは一瞬戸惑ってはいたが、そこは主従の付き合いがあるため素直に願い出を受け取り三人の後ろに引き下がった。
「・・・何なの、一体・・・」
「何もないだろう、女・・・お前はファブレを散々荒らした挙げ句、ルーク様をこのような場にまで連れ出した」
「それはあの時ルークが私に斬りかかって邪魔をしたからよ!ヴァンを襲うのを邪魔しなければこんなことにならなかったわ!」
「・・・ほう、貴様。人の家、それもファブレに侵入してきておいてその言い草・・・どうやら反省どころか罪の意識すらないようだな」
「・・・っ!」
何が起きているのか理解できないとティアが怪訝な表情になるが、カノンからの罪を問うような静かな声に一気に沸点を越え暗に自分に責はないと叫ぶ。だがその無責任極まりない発言にカノンは浸食するかのよう静かに大きな怒りを込めティアを見据え、その身を畏縮させる。



‘グワシャッ!’


「がっ・・・!?」
・・・その瞬時、カノンはティアの目の前に聖闘士としては遅いが一般人からすれば十分過ぎる程早い速度を持って踏みいって、手加減をしたものの威力十分のアッパーを顎を狙い振り切った。防御も反応も出来ず吹っ飛ばされたティアは高く宙を舞って背中から地に落ち、苦悶のうめき声を上げる。だがその様子を見て情けをかけるでもなくカノンはティアに近付き、胸ぐらを掴み無理矢理立たせて視線を合わせる。
「どうした、立て」
「な、なんでこんなこと・・・」
「なんで?おかしなことを言う。俺は貴様と同じことをしただけだ」
「わ、私と同じこと・・・?」
「そうだ。有無を言わさず屋敷の者を眠らせ、謡将を狙ったこと・・・それをお前は一片の迷いもないと言い切った、だから俺もそうしたまでだ。躊躇いなく攻撃するとな」
「そ、それは・・・確かに迷惑をかけたのは悪かったとは思ってる・・・けど私はここまでされるいわれはない・・・」
「いわれはない?なら謡将を狙った訳を言ってみろ、その中身の如何によっては救いを与えてやらんでもないぞ」
‘ポイッ、ザシャッ’
「・・・っ・・・!」
それでそのままの姿勢で問答を開始するカノンだがここまでされても一切自分の行動の非を心底から理解せずにいる反抗心の見える瞳を見て、あえて恐怖を煽るようシャカを彷彿とさせるような物言いをさせながらティアの体を地に軽く投げ捨て冷たく見据える。投げ捨てられたティアは声こそ出さずなんとかにらみ返した物の、明らかにその目には怯えが灯っていた。そして端で見ていたデスマスクは「シャカの真似ってえげつねーな」、などと言いつつも楽し気に口角を上げて見ている。それに加えカミュにアイオロスも全く動く気配すらない・・・つまりこの三人もカノンのやっていることを黙認している事になり、ティアの為に動くつもりなどそれこそ一片もないと行動で語っていた。








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