影を動く聖闘士の躍進

「・・・ここまで来た以上いずれ機を見て事情を話すことは必須になるでしょう。アッシュがファブレに戻るというのなら尚更に」
「むぅ・・・だがこのような言い方はなんだが本物と偽物の二つの存在の共栄が可能だとはそうそうは思えぬ・・・それにアッシュが戻るのなら今までの行動を全て闇に葬らねば反発の声は免れぬであろうし、ルークには偽物という目が降りかかる・・・その上でアッシュのルークに対する感情をどうするべきか・・・」
「・・・その件に関しては当人の意見・・・この場合はルーク様とアッシュの意見を聞かねばいくら論じた所で意味はないでしょう。ただ・・・ルーク様の生まれの事情と言うものは当人が聞けば今まで生きてきた中で間違いなく最大の物になるかと思われます。早ければいいというものでもございませんが、この事はルーク様にも受け入れていただかなくてはいけません・・・ですので真実はアクゼリュスに着き謡将達を捕らえた後、私から全てお話致したいと思います」
「・・・お前が、話すというのか?」
「はい、これは私の役目・・・いえ、他の誰にも譲りたくはございません」
それでいかに二人を取り巻く状況に難があるのか。それらを重く語る二人だったが、ルークへの説明をするとまっすぐ言い切ったカノンに公爵は目を丸くして確認を取るとまた一層強い視線で返す。
「見ず知らず、それも重傷を負っていて不審者以外の何者でもなかった私を雇っていただいたこと・・・公爵様を始めとしたファブレの方々には感謝の念に堪えません。ですがそもそも私がファブレの屋敷に留まりたいと思った理由は、ルーク様が私を求めてくれたからこそです。一人の人間として守ってほしいと私に・・・その気持ちに応えたいと思った気持ちは昔と今も変わってはいません。むしろ事情を知った今となってはより一層守りたいとすら思っています」
「だがお前はそのルークが傷付くようなことを選択するというが、何故そのようなことを・・・」
「・・・守ると、決めたからです。先程も言いましたが事実を知れば確実に見た目の年齢より十も低いルーク様の精神は確実に追い込まれるだろうからこそ、私が全てを明かし沸き上がるであろう感情を全て受け止めます。そして全てを受け止めた後、人道に沿わない選択でなければ私はその選択を尊重した上で味方をしたいと思っています・・・その結果、例えファブレから追い出されるような事になったとしても」
「!・・・そこまでの覚悟がお前にはあるというのか・・・」
「はい、公爵様にファブレの皆様方には申し訳ないとは思いますが・・・」
「・・・その時はやむを得ん、か・・・分かった、もしそうなったならお前の意志を尊重して私も動こう。だがお前程の男の心をそれだけ動かすとは・・・ルークは果報者だな」
「恐れ入ります」
そして次々とルークに対する想いにファブレと離れる覚悟があると告げたカノンに公爵も観念したように頷き、掛け値抜きの賛辞を微笑を浮かべながら送る。
「・・・さて、少し話が長くなってしまったな。そろそろファブレに戻るぞ、明日からルークはアクゼリュスに出発せねばならぬのだから私もお前達を派遣するために動かねばならぬ」
「はっ、かしこまりました・・・アイオロス達は後は宿で休んでくれ。明日になれば迎えに来る」
「分かった。では出ようか」
頭を下げる姿に一つ頷いて気を取り直し公爵は場を切り上げるように言うとカノンも頭を上げアイオロス達に休むように言って了承を受けた後、一同は道場を後にしていく・・・







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