影を動く聖闘士の躍進

「・・・だがどうしたものか・・・まさかバチカルで神託の盾が直に導師をさらいに来るとは・・・」
「公爵様。カミュの話によればその者達は神託の盾の者ではないとのことです。先に聞いた話によればバチカルの街に浮いた姿をした者達を昼に見掛け、先程その者達が来たとのこと・・・おそらく神託の盾はその者達を使い導師をさらわせようとしたのでしょう。自分達が手を下したと見せぬために」
「そうか・・・ならその者達を自白させればいいのではないか?」
「最初はカミュも憲兵の元に引き渡しそうしてもらおうと考えたようですが、その者達と話をするうちにその者達を利用すれば導師を内密にバチカルよりダアトに戻せるのではないかと我々に相談しようと考えたそうです」
「何・・・何故そうなると言うより、何故カミュとやらはこちらに顔を見せぬのだ?直接話をすればいいだろう」
「・・・それは少々こちらに顔を見せれぬ理由があるからとのことです。今顔を出せば導師の件ではなく、別の件で話がこじれる可能性があるからと」
「そう、なのか?・・・まぁそこは置いておこう、話が進まぬのならな」
しかしこの件はどうするべきかと悩ましげな表情を浮かべる公爵とカノンは会話を交わすが、カミュが場に来ない理由について首を傾げるものの深い理由があると聞き突っ込むのをやめる・・・尚カミュがこの場に顔を出さない理由はその顔を見せれば確実にアッシュが騒ぎ出すからだ。あの時の黄金鎧だと。そうなれば紆余曲折経ているように見えるが、実際にはカノン達からすれば折角の順調な流れが台無しになると共通して思っていた。故にカミュは敢えて顔を見せないのだ。
「それで、内密にダアトに戻すとはどういう事なのだ?」
「はい。話ではあくまでその者達は神託の盾に雇われた身でダアトにも謡将にも忠誠を誓っている様子はないらしく、条件次第ではこちらに引き込むとは言わずとも動かす事も可能だとのことですが・・・ここでもし依頼をその者達に遺棄させたとしても神託の盾が導師を狙うのは自明の理で、そうなれば余計ないざこざを生みかねないとのことです。何度も神託の盾とキムラスカの者が衝突すればいくら大詠師にインゴベルト陛下が反感を抑えようと尽力しようとも、キムラスカとダアトの国交にヒビを入れかねない互いへの反発といういざこざを」
「・・・うむ、流石にそのような事が何度も起これば反感は抑えきれんだろうな・・・」
「はい。それでその者達を利用する形で、内密に導師にダアトに帰っていただいた方がいいのではないかとカミュは言っているのです。下手に不審者を捕らえたから安心だと導師にバチカルにいてもらうよりはその者達を利用し、牢獄行きにするのを見逃す代わりに脅威は確かにあるのだと理解していただければと」
「そうなれば導師もダアトに戻るであろうし、こちらも余計ないざこざを抱えずに済ませられると言うわけか・・・成程、理にかなっているな。そう思えば導師には早目にバチカルを出てもらった方がいいか・・・分かった。私にも協力出来る事があれば協力をしよう」
「ありがとうございます、公爵様」
話を戻し改めてイオンばかりではないキムラスカについてまでの危険に、そうすることの利点について聞いた公爵も次第に納得してカノンに頷いて返す。
「だが具体的にどのように導師に理解してもらうというのだ?言ってはなんだが、本当に導師をさらわれるような事態になれば目も当てられぬぞ」
「それについては分かりやすくその者達が導師を拐かそうとしているというところを見せ、そこにカミュが来て撃退したという状況を作り上げればよろしいかと。そうすれば導師も事の重大さを理解し、穏便に事を済ませようとするでしょう。ただ公爵様がその事を不安に思われるのもお分かりになります・・・ミロ、お前は安全の為にもカミュに付いていき導師の護衛に付いてくれ。そしてそのままの流れでダアトにまで行けるように穏便に済ませる事を言い含めた上で進めてくれ。その方がタトリン一家の件も含めてスムーズに行く」
「分かった・・・だが偶然を強調するなら俺が導師を助けた方がいいだろう。そしてカミュにはサポート役として影で動いてもらい、うまくいったらそちらにカミュを戻す。人手はそちらの方が多い方がいいだろうからな」
「悪いな、ミロ」
「気にするな・・・では私はこれで失礼します」
「うむ、よろしく頼む」
しかし一抹の不安がとイオンの安全に公爵が声を上げると、カノンは対策を述べつつその役目をミロに頼むと快い了承と共にカミュと交代すると告げる。カノンが礼を言いミロは公爵に向かい頭を下げ、公爵の言葉を背にしながら退出していく。







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