双子の片割れと三人の聖闘士の介入

・・・そこから辻馬車を追い掛けるカノン達。だが揃って光速の動きを身につけている黄金聖闘士達にとって馬車の動きに追いついて走ることなど然程苦労する事でもなく、ローテルロー橋を越える頃には多少遠くも横並びに走るくらいの位置につけていた。

そんな状態で走り続け夜も更けた所でカノン達は別の方角から現れた辻馬車を追い掛けるタルタロスという陸上戦艦がその辻馬車の近くを通る場面を目撃していた。



「おっ?なんだ、この世界は中世ヨーロッパ程度の文化レベルって聞いてたけどあんなのもあんだな。この世界」
「むしろあの陸上戦艦のような発達した技術の戦艦は今の地球にすらないだろう・・・これが異文化の発展の仕方の1つなのだろうな」
そんな光景を見ながら一応タルタロスが見えた時怪しまれないように念のために遠くで立ち止まっていたカノン達の中、デスマスクが面白そうにその光景を見ていてカミュは興味深そうに見つめる。
‘ボゴオォォンッ!’
「・・・何!?あの辻馬車、ローテルロー橋を壊しただと!?」
「・・・どうやらあの辻馬車に乗っていたのはマルクトって国にとって厄介者だったようだな。けどそれで追いかけてきたマルクトの軍をどうにか止めようと・・・」
「くっ・・・これでカイツール経由でしかバチカルにしか戻れんか・・・」
だがタルタロスが追い掛けていた辻馬車がローテルロー橋を通りつつ爆弾で爆破したことに、アイオロスの予想を受けカノンは苦い表情で歯を噛み締める。
「とりあえずルークの乗っている辻馬車を追った方がいいのではないか?ここで見失うのはあまり得策ではないだろう」
「そうだな・・・あまり俺も地理には詳しくはないがセントビナーに行くかエンゲーブに行くか、どちらに行くかを間違えばまずいことになりかねん。追い掛けるぞ」
そこにカミュがあくまで冷静に務めてまずは馬車を追い掛けようと発案すれば、カノンも気を取り直しまず辻馬車を追い掛けることを選び一同その言葉に従い走り出す・・・












・・・再びルークの乗った辻馬車を追い掛けるカノン達。少ししてその辻馬車が前方にある村の方へと向かったのを見てカノンが立ち止まる。
「確かあそこはエンゲーブ、だな」
「いい所じゃないか。肥沃で広大な大地にのどかな田園風景・・・今の地球にこれ程の所はないだろうな」
「この辺りは科学技術がそこまで発展していない影響もあるのだろう・・・だがどうにも不自然、だな」
「おっ、やっぱお前もそう思うか?カミュ」
その村の姿にエンゲーブというカノンにアイオロスは笑顔でいいところと評するが、対称的にカミュは科学技術について不自然と言いデスマスクもカミュの顔を覗きながら同意する。
「・・・参ったな、そこには触れようとは思わなかったのに」
「貴方が気付かないとは思っていませんでしたよ、アイオロス」
そんな3人にアイオロスまでもが気付いていたがと困ったような笑顔を浮かべ頭をかく様子に、カミュは微笑を浮かべる。
「悪いがその話は後にしてくれ。この世界の歴史を語るには少し時間が足りん」
「わかった。ならば今日の夜にでも頼む」
「・・・わかった。では行くぞ」
そんな3人を前に一般に知られるこの世界の歴史を知るカノンが後にしろと言えば、すぐ話せと言わんばかりに夜にと約束を取り付けてくるカミュに少し微妙な表情になりつつもカノンは頷き先に行こうと言う・・・先代からの影響なのか意外と知識を知ろうとする欲求の強いカミュ。こう言った事態に対してもそれは変わらなかったようだ。






・・・そんなやり取りもありつつ、エンゲーブの中に入ったカノン達。普通ならルークを探すのに多少時間がかかっていただろうが、小宇宙を感じれるカノンにとってそのようなこと関係無かった。



村の中の露店に並ぶ数多のリンゴの姿を見つめるルーク、その隣にいる憮然とした表情の神託の盾の服を来た女の姿・・・その姿を確認し、カノンはその間に入るよう身を入れる。
「・・・お待たせしました、ルーク様」
「!・・・カノン、来てくれたのか」
微笑を浮かべながらも周りに聞こえないよう抑えた声で迎えに来たと告げるカノンに、ルークも驚きつつも抑えた声で嬉しそうに表情を綻ばせる。
「・・・なんなの、貴方?」
・・・そんな空気を一切気にせずまるで不審人物を見るかのよう、疑問の声を向ける女。その様子にカノンは微笑を崩さぬまま振り向く・・・その背にルークを庇いながら。






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