影を動く聖闘士の躍進

「・・・アッシュのもしもの場合の処置も決まったようなので話を続けさせていただきますが、我々はアクゼリュスに着き謡将の行動が公の物になり次第行動して捕縛にかかりたいと思います。そして謡将の真意がいかな物なのかをお聞きし、その答えを公爵様にお伝えしますのでそこから決断していただきたいのです・・・キムラスカはどうするべきなのかと、それを陛下達と共に」
「うむ・・・分かった・・・!」
話の流れを継いでカノンが事の予定をまとめて告げれば、公爵は決意を示し表情を引き締める。
(よし、これで住民の安全確保までは時間が取れるな・・・)
その答えにカノンは内心で成功だと考える。



・・・この場で重要だとカノン達が考えていること、それは公爵をこちら側に引き込むこともだがアクゼリュスの住民を無事に助け出すこともだ。

もしここで公爵がキムラスカ側に寄ってしまったなら住民を助け出す事が難しくなってくる。聖闘士の力を遺憾なく発揮しない限りは。だが公爵が味方であれば多少の時間はかかってもカノン達の為に動いてくれるだろう事から、独自に住民を救うために動くカノン達の隠れ蓑になってくれる。そうカノン達は考えていた。

だがそれだけではまだ足りないし、言うべき事はまだ残っている。それは・・・



「・・・カノン、いいか?」
「なんだ、アイオロス?」
これで話は終わり、そんな空気が流れていた所にアイオロスの緊迫感に満ちた声が入る。
「この際だからアニスに大詠師、そして導師の事も言っておきたいのだが・・・」
「っ・・・アニスの事は分かるが、導師の事も言うというのか・・・?」
「・・・なんだというのだ、一体・・・?」
・・・そう、アニスにモースの件に加えてイオンの事だ。
アイオロスの言葉にカノンが驚愕の様子を浮かべる姿に不安げに公爵は眉を寄せる。
「・・・公爵様、すみませんがまた時間をいただけるでしょうか?これよりダアトについての事実をお話致します。我々があの旅で知った衝撃の事実を」
「っ・・・うむ、わかった」
しかし話を聞くことを切に願うアイオロスが頭を下げた事に公爵は押されながらも頷く。















・・・それからカノン達はアニスのスパイの件にイオンがレプリカではないかとシンクの事から疑っているという話を公爵に向けて行った。その話に最初から驚きを浮かべていった公爵だが、今のイオンですらもがレプリカではないかと聞き酷く動揺する事となった。



「・・・と言うわけでございます」
「い、今の導師すらもがレプリカ・・・だと・・・!?」
「まだ確定ではありませんが・・・シンクという存在がいる時点で導師のレプリカが存在する事には間違いはなく、謡将が関与していることも伺えます。可能性は高いと見ていいかと思われますが・・・その件に関してはアッシュの方が詳しいかと思われます」
「・・・っ!」
そして話が済み公爵が動揺に揺れる中、可能性の高さを述べつつアイオロスはアッシュに視線を向ける。
「さて、アッシュ・・・お前はこの事は知っていたか?」
「・・・・・・導師とシンクの件に関しちゃ、どっちもレプリカでまず間違いねぇ。俺も詳しい話を聞いたことはねぇが、シンクは2年前にいきなり神託の盾に配属されてきた。それと同時期に導師もアリエッタからアニスとやらに導師守護役から交代させられ、アリエッタは神託の盾として活動するようになった」
「成程、アリエッタの感じから考えりゃ誤魔化すとかって事が出来そうにねぇのは目に見えてる・・・だからそのついでにあの嬢ちゃんをスパイに仕立てあげて導師の情報を流させてたって訳か。大詠師様は」
「しかし随分と簡単に話してくれるな、今回は・・・自分の事ではないからか?なら随分と薄情な物だな、仲間を簡単に売るとは」
「違うと思いますよ、ミロ。このアッシュにとって六神将に謡将は真実仲間ではないのでしょう・・・だからこそ簡単に言えるんです。自分の身にプライドとは関係無いのだからと、手前勝手で都合のいいことを」
「・・・っ!」
そして問いを向ければ少しの間こそあれど簡単に肯定の言葉を漏らすアッシュだが、ミロとムウの冷ややかな言葉に息を詰まらせた。神託の盾を仲間と思ってないから平気で売ったと、否定しようにも否定出来ない・・・それは紛れもない事実で否定をすることは即ちキムラスカを見放したことに繋がると、そう思ったが為に。








8/27ページ
スキ