影を動く聖闘士の躍進

「・・・公爵様。ここでアッシュの件を後に回したなら、事を明らかにする機会を失することになると思われます。公爵様が望もうと望まれまいと」
「何・・・どういうことだ?」
重くなる空気の中で今度はデスマスクがアッシュの事について告げ、公爵は疑問の視線を向ける。
「おそらく明日になればルーク様はこのままアクゼリュスに向かうことになるのでしょうが、事が起きてしまえばアッシュが本物のルークなんだと声高に言うことは大詠師からして許されない物となります。何故ならその事実が明らかになれば預言に沿ってない事になりますから、大詠師からすれば絶対に望まれる事ではありません。ですから大詠師が望む展開としてまだ軽い展開はルークという名を名乗らない事を条件にアッシュもしくは別の名前そのままにキムラスカに戻されるくらいでしょうが、徐々にキツくなる展開を想像すればアッシュはダアトの所属なのだからとその身柄を我が物同然に奪うくらいはするでしょうし、最悪の展開としてはアクゼリュスと共に滅びたとあるのだから、アクゼリュスが消滅した後の土地で殺し少しでも預言に近付けようと思うことかと」
「!」
「な、なんと・・・モースはそこまでするというのか・・・!?」
そこでいかな結果がモースによってアッシュにもたらされるのか、デスマスクが段々に語るその言葉達にアッシュは目を見開き公爵は愕然とした声を上げる。
「無論これはあくまでも例えの話ですが、少なくともアッシュの身柄が表沙汰になるのは避けたいとキムラスカに持ち掛けるのはまず間違いないかと。預言通りにいかないということは大詠師にとって望まれる事ではありませんが、それ以上に事が明るみになれば謡将の一連の件も芋づる式に出てきます。そう考えればアッシュにキムラスカの口を封じにかかるのは大詠師からして最優先の事案になるのは間違いないかと・・・公爵様とキムラスカに対する大層な不義理であることなど関係無く、先程も言ったように謡将の事実を明らかにしようともその動機を本当に知ろうとすることもなくただ預言通りならいいと目を背け。そしてそうなったならもう二度と事を明るみには出来ないでしょう・・・何せ戦争は預言に詠まれた事でルーク様を犠牲にすることをよしとしたのですから、事実を明らかにしたことへの称賛より国の闇とも言い変えられる決意を見た事に世界各地から大きな反感を産み暴動が起きかねない」
「っ!・・・くっ・・・ならばどうすればいいと言うんだ・・・!」
そして静かに、だが確実な脅威を滲ませる推測の数々を告げていったデスマスクに公爵も反論が出来ないと感じ悔しげに視線を背ける。
「本当でしたらアッシュをこのまま城にまで引き立てて、謡将の狙いを吐かせる方が現実的に見て一番手っ取り早い方法でしょう。ですが謡将があっさり狙いを吐くとも思えませんし、アッシュ自身もこの通り協力的ではありませんからすんなりとはいかないでしょうね・・・」
「う、むぅ・・・アッシュ・・・」
「っ・・・」
今度はムウがアッシュを見下ろしながら重く城に連れていっても上手くはいかないだろうと言うと、公爵は複雑に顔に声を歪ませるがアッシュはまた視線を背ける。
「・・・公爵様、このようなことは申し上げたくはございませんでしたが現状ではこれが最善かと思い献策致します。よろしいでしょうか?」
「・・・なんだ、カノン?」
「はい・・・私が提案するのは敢えてアクゼリュス行きを邪魔はせず、アッシュを神託の盾の乗るタルタロスに戻すことです」
「なっ・・・!?」
「カノン、お前気は確かなのか・・・ここまでアッシュを連れてきたと言うのに、それをわざわざ・・・!」
そこで恭しく声を上げたカノンに公爵が先を促すが、まさかの提案にアッシュも公爵も驚きに目を丸くする。
「私は血迷ってそのような事を申し上げた訳ではございません。まずはお話をお聞きしてはいただけませんでしょうか?」
「・・・うむ、いいだろう。話せカノン」
「ありがとうございます」
だが全く揺るぐことのない視線に分かったと頷き公爵は話すように言い、カノンは頭を下げる。







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