影を動く聖闘士の躍進

「・・・ミロの言うことには一理ありますね。本当に心が通じあえていて信頼しあっていたなら謡将はアッシュに全てを話していた可能性が高かったでしょうし、アッシュが謡将を真に慕っていたならそもそもルーク様を恨むという筋違いな事を起こすこともなく神託の盾として謡将の考えを支えるような考えに至っていたでしょう。しかしそうはならなかった」
「・・・それが全てとは言わないにしても、アッシュの我が故にか・・・皮肉な物だな。ヴァンに忠誠に協力を本心からしていないことは正直に嬉しく思うが、その我のせいで信頼をされないというのはな・・・」
「・・・っ!」
ムウはミロの言葉に賛同しつつその心根の問題に突っ込み、公爵は複雑げにその中身に心境を漏らしアッシュは何も言えずに歯を噛み締める。
「・・・アッシュへの謡将の信頼の有無についてはともかくとしても、そう言うことなら謡将はアッシュにまだ何か隠してることはあるんじゃねぇのか?アクゼリュスについてのことは明かしちゃいるだろうが、それ以降の事は何をどうするのかって事はな」
「・・・有り得ない事ではないと思うが、その辺りはどうなのだ?アッシュ」
今度はデスマスクが秘密の有無について切り出し、カノンは頷きつつ再度問いかけをアッシュに向ける。
「・・・それは・・・奴はアクゼリュスを落とした後はその後に起きる戦争の中で影で動いていれば目的は自ずと達成される、と言っていた・・・預言を覆すという目的はな・・・」
「預言を覆す、か・・・成程、一応謡将の目的は知ってはいるようだな。それに二人の入れ換えの件から考えれば頷ける目的でもある。だがその様子では今までの話から最終的な目的がどこにあるのか、それは知ってはいないと見るが・・・これでより一層謡将がアッシュに対して何か隠しているだろう可能性が高まったな。それもあまりよくない方向性で」
「・・・っ!」
それで視線を反らしながら絞り出すような言葉を出すが、それが精一杯信頼はあったと言い張っていると見た上で秘め事はあると確信して言うカノンにアッシュはビクッと体・・・はムウに固定されて動かせないので頭を動かす。
「・・・だが預言を覆す、とは・・・わざわざ二人の入れ換えを施す程だ。それだけのことをする目的と動機には納得は出来るが、何故そこまでの事をしなければならないのだヴァンは・・・?」
「・・・預言を偏重するが故の光と影、それがこのような形で表に出たのだと思われます。今までの第一から第六と詠まれてきた惑星預言には繁栄が詠まれてきたと言われていますが、同時にその預言には戦争という結果が詠まれてきました・・・その戦争の積み重ねの結果、今のキムラスカとマルクトという形に相成りその譜石も見つかったと言われていますがそれらを知ったなら敗残した国の人間がいい想いをするでしょうか?預言を信じてきたと言うのに、その預言に裏切られるような事になって・・・」
「っ・・・耳に痛い話だな。戦争には犠牲が付き物だが、今まで私はそのようなことから目を背けてきた・・・そしてヴァンにその一味は預言の影とも呼べる犠牲者と言うことか・・・」
今度は公爵が難しい顔でヴァンについて考える声を上げるが、カノンがこの世界にない考え方である預言の光と影・・・栄光とその裏の犠牲について重く切り出し、公爵は暗く俯く。
「・・・公爵様の心中、お察し致します。ただ私個人の考えとしては謡将が単なる預言への復讐の為に行動を起こしたとはあまり思えないのです」
「何・・・それはどういうことだ、アイオロス?」
「預言への復讐だというなら極端な話、アッシュを殺してしまえば預言は達成出来ない事になります。むしろ今までの行動を振り返ればそちらの方が容易かったでしょう、何せファブレ邸にまで入り込んだのですから・・・」
「っ・・・うむ、確かにな・・・」
「では何故そうしないばかりか兵力まで携えてアッシュを手元に置くのか・・・この答えが明らかにならねば何をするにしても危険が伴う可能性が高いと思われます。例え公爵様が預言通りに行かせようと決断をしたとしても」
「っ・・・そ、それはどういうことだ・・・!?」
今度はアイオロスがヴァンの行動の不審さについて語るが、最後に告げられた言葉により一層動揺を露にさて先を促す・・・何故預言に従う事を選択肢に上げたのかと言えば、それを結果的に選べなくするためだ。いかな不利なのか、それを理解してもらうために・・・







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