世界の奔流の一幕に聖闘士の影

「勝手に、か・・・なら言ってやろう、謡将を捕縛している訳を。その訳とは謡将がこのアクゼリュスに着いた時、キムラスカの兵士に手をかけようとしたからだ」
「えっ・・・!?」
だがその文句はアルデバランの言葉で驚きに止まることになった、ヴァンが人を襲ったという事実を明らかにされたことで。
「ど、どうして兄さんがそんな事を・・・!?」
「その訳について心当たりがあるのはお前の方ではないのか、ティア=グランツ?」
「っ・・・っ!」
たまらず信じられないと動揺の声を上げるティアにカノンが冷静な問いかけを向けると、反論しようと振り返ったが途端にハッと固まった。
「その様子は正解のようだな・・・そしてその態度で確信した。お前がファブレ邸で謡将を襲ったのはその心当たりが理由だな?」
「・・・っ!」
「・・・分かりやすいな。話は早いが、兵士としてはあまりに未熟だ」
カノンはすかさずファブレ邸での事もその心当たりが理由だろうと告げればすぐさま視線を焦って反らし、呆れながら声を上げる。
「・・・まさかそんなことをしようとしてたなんてな、謡将が・・・」
「大丈夫ですか、ルーク様?」
「あぁ、ちょっと驚いただけだ・・・」
その中でルークが顔を少し青ざめさせ顔を振る様子にカノンが心配の声を向けると、頷きを入れて大丈夫と返す。
「・・・でもどうするんだ、カノン?・・・何かどう言葉にしていいかわかんないけど、謡将が兵士を殺そうとしたってことはもしかして・・・俺らも殺そうとしてた可能性があるかもしれないだろ?・・・どうするんだ、謡将の事・・・?」
「・・・おっしゃる通りです。もし一つ間違ってアルデバランがいなければ兵士達の命はおろか、今頃我々の命を狙わんと謡将は機を伺い行動を起こしていたやもしれません」
「っ・・・やっぱ、そうなるよな・・・そんな行動してたってことは・・・」
ただそれでも溢れる不安を滲ませるルークにカノンも重く受け止めた上で最悪の可能性を口にすれば、今度は確かな恐怖を滲ませながら納得しつつうつむく。
「ただ一つ、ここで疑問として謡将が我々を殺したとしてどうするつもりだったのかということが出てきます。このアクゼリュスで我々を殺してしまえばいくら取り繕った所でルーク様を初めとするこの一団の殺害及び和平の妨害という大罪を背負うことになる上、時間が経てばいつまでも戻っても報告すらしてこない我々をキムラスカにマルクトが放っておくとも思えません。謡将もそれくらいは承知の上で行動を起こしているはずですが・・・その辺りの事は聞いているのか、アルデバラン?」
「いや、しばらく気絶していてようやく起き上がったから話は聞いてない。本来なら無理にでも起こして話を聞けばよかったのだろうが、住民の安全が先だと救助を優先した結果だ」
「そう言うことならやむを得ないか・・・まだ謡将が何を考えて行動を起こしたのか、その理由はハッキリとはしていません。ですが謡将が自身の立場と身の危険に頓着せずそこまでの行動を起こせたというこの疑問は到底見過ごす事は出来ませんが、その理由次第では世界規模での戦争にすらなり得る事態になるかもしれません」
「「・・・っ!」」
しかしまだ続くカノンの疑問の提起、それも明らかに脅威を多大に滲ませる言葉達に終いにはルークとティアの二人は驚きに息を呑んだ。戦争、それも世界規模とまでという最悪の可能性が明かされ。
「ですがその疑問を解決出来るであろう答えを持つ者・・・それがティア=グランツです」
「・・・っ!」
「・・・あっ、さっき言ってた心当たりの事か?」
「その通りです」
しかし答えはティアが知ってると言い出したカノンにティアは顔を青ざめさせ、ルークは対照的に少し表情を明るくさせカノンを見る。ルークに答えつつもカノンはティアに鋭い視線を向ける。









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