世界の奔流の一幕に聖闘士の影

「あの、大佐・・・一体何故、そんなことを聞いてきたんですか・・・?」
「・・・本来でしたら少々気になることがあるのでとだけ言うところですが、この際ですから言わせていただきます。私はこの和平に関してすんなりと行くような気がしないんです。何か様々な思惑が入り乱れていて、その思惑に転がされているような・・・ね」
「っ、大佐・・・」
ただティアがその質問の意図について意味が分からないと不安げに聞いて来たので、ジェイドは滅多になく本音を明かしティアを怯ませる。その複雑さが滲む声に。
「勿論国と国のやり取りに何か思惑が絡まない事はありませんが大詠師に謡将、それにファブレ公爵は何か和平とは別の所で動いている・・・そう思えてならないのです」
「モース様はそんなこと・・・」
「貴女が大詠師に対し忠誠を誓っているのは重々承知した上で言っていることです。その上で私はあえて言っているんですよ・・・ちなみにお聞きしますが、大詠師の事は置いておくにしても貴女はどうお思いですか?」
「・・・正直、分かりません。そんなこと考えたことありませんし、モース様がそんなことを思ってるなんてそんな・・・」
「・・・そうですか」
ジェイドの壮大でいて考えさせられる言葉、それを聞いていたティアだが不安げな顔で何も返せないとモースへの信頼を滲ませつつ告げる姿にジェイドはまた一言で返す。
「・・・すみません。このような事に付き合わせてしまって。お話ししたい事はこれだけですので、出発の時間までゆっくりしてください」
「はい、では」
そして終わりだと告げるとティアは頭を下げすぐに場を後にするが、ジェイドはその後ろ姿を冷やかな視線で見る。
「・・・ティアはダメですね。難しい事を考えること、疑いを向けることに致命的に向いてない。そしてそれを自覚していない・・・あれは自分がどういう立場にいるかもですが、それこそ大詠師達に言われたことをそのまま鵜呑みにしかしていないでしょう・・・あれではこれから先彼女を頼ることなど出来ないどころか、むしろ邪魔にしかならないでしょうね・・・だからこそ謡将のあの言葉でもあり、我らに付いていかされた理由でもある・・・」
それでジェイドが漏らしたのはティア本人が聞いたら確実に衝撃に愕然としそうな見捨てるような言葉、その上でその態度が同行の理由だろうと冷静に呟く。
「おそらくその理由もまず良くないものであることは想像がつきますが、だからこそ分からないのはファブレ公爵の行動・・・和平の為に選ばれたメンバーは私にティアにルークの三人のみであったというのにあの四人を付けた。それも独断で・・・執事のカノンなら分かりますが、あの三人までというのは少し不自然ですね。無論念には念を入れてという可能性もありますが、それはキムラスカの為なのか公爵の為なのかはたまた・・・どうとも判断がつきかねますね。今のところは・・・」
そしてそこから独り言を発展させカノン達の派遣についての予想を口にするが、答えを出すにも判断材料がないとジェイドは首を横に振る。
「・・・まぁいいでしょう。どちらにせよアクゼリュスから少しすればこの一団もそれまでですから、その時が来るまでは彼らに頑張っていただきましょう。ティアに無駄に張り切られるより、その方がこちらも楽でしょうからね」
ジェイドはそこまで考え、それまでの考えを打ち切り気楽に行こうと決める。実質ティアを見離すような言葉も付け加えられた状態で・・・












・・・それからしばらくして各々ルーク達は休憩を終えて集合し、オアシスを出立した。表向きは一切何事もなかったように・・・







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