世界の奔流の一幕に聖闘士の影

「んじゃ早速行こうぜ、バチカルを出れるかもっつってもこんな薄暗い所にずっといたくもないしな」
「はい、参りましょう」
それで機嫌よく早く行こうとルークが切り出し、カノンも頷いた事で一同は先へと歩き出す・・・












・・・それで廃工場の中を探索し、多少仕掛け仕立てになっていて通りづらかった道もその仕掛けを解除していく事で無事に先に進んでいった(ちなみにその仕掛け仕立てとは工場に張り巡られているパイプからまだ残っているオイルを使って先に進むという物になっていたが、そこはデスマスクが持っていたマッチを使い燃やせる物に火を着け投げつけるという物理的な手段で解決した)。



「・・・ルーク様、あちらをご覧ください。あれがバチカルの外に出られる出入口です」
「あっ、確かにあそこから外の光が見えるな・・・それに出れそうな足場もあるし・・・」
そんな一同の中でカノンが向けた視線と声にルークも他の面々も確信する。今までの回ってきた薄暗い場所に見えたその場が出入口だろうと。
「・・・ルーク様、少々お下がり下さい。これまでに出てきた魔物とは明らかに違う、異質な強い気配があります。そしてその魔物は今にも襲いかからんとしてきているので、戦いは避けられません」
「えっ・・・わかった、そう言うなら・・・」
ルークは入口に向かい歩きだしかけたが、すぐにカノンが緊迫した声で魔物だと前の上の方を油断なく見据えながら言い出したことにただならぬと気付き素直に身を引く。
「縄張りに入ってきた異物を排除に来たか・・・」
「だろうな。こんな人の手の入んねぇ場所だ。魔物や虫に小動物くらいが精々って場所に誰か来ることなんざねぇから、警戒もするし排除にも来るだろ」
「さしずめこの気配からして誰もいなくなったこの廃工場の主と言った所か・・・済まないな、住み処を踏み荒らすような真似をして・・・だがこちらも急いでいる身だ。悪いが通してもらうぞ」
そんな光景にカミュ、デスマスク、アイオロスと三人は悠然と順に声を上げながら会話を交わしたアイオロスはカノンに振り返りつつ視線を向ける。
「カノン、お前はルーク様をお守りしろ。魔物は私達三人で片を付ける」
「・・・すまないな」
そして口にされた言葉に従いカノンも下がる、ルークを守るために。
‘ドンッ’
「・・・見たことのない魔物だな。察するにここで独自の進化を遂げた魔物といった所か」
「興味を持つのもそこら辺にしとけよ・・・来るぜ!」
それでタイミングを見計らったかのよう上から降って飛び降りてきた蜘蛛をそのまま巨大化させたかのような魔物に興味深げにカミュが声を上げる中、デスマスクの言葉を皮切りに魔物が三人へと飛び掛かる。
‘ガシッ’
「・・・はぁっ!」
‘ガシャンッ!’
その蜘蛛の魔物が標的に定め足を向けたのはアイオロス・・・だがアイオロスは難なくその足を両手で掴み取り、その足ごと自身の体より二倍以上もあるその巨体を勇壮な掛け声と共に横に捻り投げる。
「悪いが時間はかけてられん・・・一気に決めさせてもらう」
‘ゴッ!’
『・・・っ!』
「お~お~、苦しいか?・・・んじゃ手っ取り早く楽にしてやるぜ!アクベンス!」
‘バキャッ!’
‘・・・ガシャンッ’
「・・・やったのか?」
「手応えは十分でした、これでもう起きることはないでしょう」
間をおかず連撃だとカミュが拳を胴体に当てるとその魔物は声なき声を上げながら宙に浮き、デスマスクがとどめと宙に跳び上がり任務でも滅多に使わない体術・・・それも蟹が自身の足を使い敵を挟み殺すかのよう、聖衣の両方のレッグパーツを使い足で挟み倒すアクベンスという技で蜘蛛の魔物の頭部部分を狙った。技を食らい鈍い音と共に地に倒れ伏した魔物にルークが恐る恐る確認を取る中、デスマスクは自信満々に笑顔で大丈夫と答える・・・事実、魔物はもう二度と起き上がることはなかった。








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