世界の奔流の一幕に聖闘士の影

「その辺りにしておけ、デスマスク。黒幕が誰かという事実はどうあれ、俺達はこの娘とアクゼリュスまで同道するんだ。これ以上不毛な問答を繰り返すのは時間を取り、更なる不和を呼ぶだけになるぞ」
「そうだな。この嬢ちゃんが大詠師を盲目に信じてるかどうかなんざ関係ねぇしな」
「・・・ぁっ・・・」
その光景を見かねたといったように声をかけるアイオロスにデスマスクは軽く了承を返すが、ティアは何かを言いたげに小さく声を上げるがすぐに目を反らす。察するに弁解したいがまともな弁解が出来ないから黙ったと、そう取れる行動だった。
「んじゃ行こうぜ。ちょっと時間食っちまったし」
「えぇ、参りましょう」
「・・・」
そんなティアに関することなく再度出発をと言い出すルークにカノンも同意し、先へと歩き出す。ティアはその中でただとぼとぼと最後尾を付いていく形で後を追う・・・












「・・・ルーク様、少々お待ちを」
「ん・・・なんだよカノン?」
・・・それで下の階層に来たルーク達は砂漠越えの準備を済ませ橋を渡ってバチカルを出ようとしたのだが、カノンが突然制止をかけてきたことにルークを始めに一同立ち止まる。
「遠目で多少ぼやけていますが、橋の向こう側に特徴的な仮面を被った者がいます。あれは私の記憶通りなら神託の盾の六神将のシンクで間違いないかと思われます」
「はっ?神託の盾は船に乗ってんじゃないのか?」
「おそらく導師をさらうために神託の盾が見張りを立てたのでしょう。バチカルから逃さないためにも。ただ真実はどうあれあそこに神託の盾という見張りがいる以上、正面からバチカルを出るのは危ういと思われます。シンクが争いを避け我らをバチカルを出したとしても、兵も姿が見えなくなればその瞬間我らを多数の神託の盾が襲いにかかる・・・といった可能性が最も有り得るでしょう」
「っ・・・じゃあどうするんだよ?このままじゃバチカルを出れないぞ」
「・・・その点については打開案がございますが、正直に申し上げます。これは本当かどうか、そしてバチカルを出れるか半信半疑の眉唾物です」
それで橋の向こう側の遠くを見つめ神託の盾がいると告げるカノンにルークもバチカルを出れないと気付いて声を上げ、そこでカノンは多少苦い顔を浮かべつつ兵士の見張りがついた天空客車へと視線を向ける。
「あの天空客車の先は人目につかずバチカルを抜けられるであろう場所に繋がっております。ただ今言ったように本当かどうかは定かではない眉唾物ではありますが、今のままでは無事にバチカルを出る手段がございません。それでですが私の言うことを信じてはいただけはしないでしょうか?あちらに向かえばバチカルを出れると・・・」
「カノンがそう言うってのも珍しいな、断定しないって・・・まぁ仕方ねぇか。今のまんまじゃバチカル出れそうにないしそっち行った方がいいか」
「・・・やれやれ。まぁこの状況では仕方ないですか」
「・・・」
それでカノンにしては珍しく懇願して信じてほしいと言い出す姿にルークはそうすると決め、ジェイドも余裕そうに肯定を返すが一人ティアは何も言わずに視線を合わせようともしなかった。
「ありがとうございます・・・ではあちらの兵に話を通しますのでしばらくお待ちを」
「あぁ、分かった」
一応反対が出なかった事でカノンは頭を下げた後に話をしてくると言い、ルークが頷いた事で一同はその後ろ姿を見送る。











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