世界の奔流の一幕に聖闘士の影

「と言うわけだ・・・流石に街中に城の中でまで神託の盾が襲ってくるとも思えないが、もしもの事を考え俺も導師がダアトに戻るまで付いていく事にした。これは導師の許可もいただいている」
「・・・そうなんですか・・・?」
「はい・・・ミロさんに助けてもらってばかりで申し訳ないとは思いますが、今の状況ではキムラスカに必要以上に迷惑をかけられませんからね。ですから臨時に雇った傭兵としてミロさんには振る舞っていただきます・・・勿論謝礼は支払うようにはします。これくらいはしなければ恩知らずの恥知らずになりますからね」
「そう、ですか・・・」
そしてミロが自身もダアトに護衛として行きイオンもそれを願ったと言い出したことに、ティアは更に複雑そうな顔を浮かべた。
「イオン様、そろそろ行きましょう。あまり時間をかけてお話をすればそれだけアクゼリュスに遅れる事になりますよ」
「あぁ、そうですねアニス・・・では僕達はこれで失礼しますが、アクゼリュスの救援がうまく行くことを祈っています」
そこにアニスがもう切り上げるべきと話に入ってきたことにイオンも頷き、別れの挨拶を述べて三人は上に上がる天空客車へとルーク達の横を通り向かう。
「・・・神託の盾の手を逃れる為に、ですか・・・妥当と言えば妥当な判断ですが、大詠師がイオン様のその判断をどう思われるかは複雑でしょうね」
「っ・・・大佐、モース様がイオン様をさらうようになんてするわけがありません。あの方は預言の成就だけを願っておられます」
「預言の成就だけを?ハッ、その言い方だったら預言に詠まれてさえいれば導師だってさらうような人間だって言ってる風に聞こえんぜ」
「っ、違っ・・・私はただ、モース様じゃなくて兄さんが怪しいと・・・!」
「違わないね、お前の言ったことはそういう物だ」
その姿を見送った後にジェイドが皮肉混じりな言葉を放つとすぐにティアが擁護に入るが、デスマスクから指を指されその言葉の意味するものを突かれすぐに焦りに声を揺らし自己弁護に入る。が、デスマスクはその言葉をいやらしい笑みを浮かべながら否定する。
「預言の成就だけをってお前言ったよな?・・・ま、平和なら平和でそれは別にいい。けどそれが預言って単語がくっつかないで語られる平和って物を大詠師サマからお前聞いたことがあるのか?ましてや大詠師って立場にいる人間とプライベートを共にしたり、立場を越えて本心が理解出来るほど言葉を交わしたことがお前にはあんのか?」
「・・・それは、その・・・」
「誰かに忠義を誓うのはそいつの自由だ。勝手にすりゃいい。けど自分の中の基準に当てはめてその人物が安全かどうかなんざ他人からすりゃ分かるわけねぇ・・・さしずめ俺がお前から聞いた大詠師様の印象ってのはそれこそ預言の成就だけを願って、その為ならなんでもしかねない危険人物だ。そしてそれを否定出来る材料もロクにお前は持っちゃいない・・・そんなんで大詠師サマは安全だなんざ言われたっちゃ信用も出来ねぇが、それ以上にそんな不確かな情報程度で大詠師サマは違うなんて確信して言えるなんざ俺は信じられないね」
「!・・・っ・・・!」
それで語られ問われるデスマスクの声に、最後にティアはたまらず下を向き悔しげに歯を食い縛り何も言えずに終わってしまった・・・いかにティアがモースの事を知らず盲信していたのかを疑う疑わない以前の問題として、その事を自分の発言から取り上げられ突き付けられてしまったが為に。










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