世界の奔流の一幕に聖闘士の影

「その件についてはこちらもルーク様が準備をされている間に打開案を講じました。その結果、謡将を囮に出す形で船に乗っていただき我々が陸路でケセドニアに向かうという案が一番妥当だとの意見でまとまりました。ちなみに本人が名乗り上げた上でこの案が妥当と結論づきました」
「はっ?何でそれが一番妥当なんだ?謡将が囮にってのが妥当とは思えないんだけど・・・」
「無論、今からその事についてはお話をします」
そんなルークに打開案はあると明かすが、釈然としない様子にカノンは心得ていると話を続ける。
「本来でしたら和平の障害になる洋上の神託の盾・・・この者らは現在バチカルに揃っている導師に大詠師の許可をいただければ神託の盾ではなく賊軍となり、軍の船を編成して壊滅に追い込む事も出来ない訳ではございません。ですが相手は船団を率いておりますので同程度かもしくはそれ以上の規模がこちらには必要となり、出港するための船も人員も時間と共に必要になります。ですが相手は和平を妨害するのが目的と見られていますのでこちらと素直に全面決戦をするとは思えず、むしろ用意が出来て出港となった時には役目は終わったと言わんばかりに早々と撤退する可能性が高いかと思われます」
「あ~・・・そんなことになったらただ時間の無駄になるだけだよな・・・こっちは急がなきゃならないし・・・」
「ですがかといって強行突破に危険がないかと言われれば、それこそ危険以外の何物でもありません。向こうが手段を選ばず船を沈めに来たなら、こちらはかなり不利な状況に陥ります・・・ですが謡将を囮に船に乗り込ませれば、少なくとも陸路でケセドニアに向かう面々の驚異はなくなり神託の盾もまた船を襲う可能性は低くなります。まず陸路を向かう我々の危険性が低くなるのは沈没の心配もなくなり行動に自由が効くことが上げられ、謡将を囮に上げれば神託の盾はそちらが和平の本隊であると思うでしょう。無論謡将も危険に陥る可能性がありますのでその場合はケセドニアに船に謡将が着かなかった時は、神託の盾より除籍され即刻指命手配をされると謡将が申し上げる手筈となっております」
「・・・それで神託の盾を牽制して俺達が陸路を行くって訳か・・・」
「現状ではこの手段以外に神託の盾の手を振り切る事はまず出来ないかと思われます。時間をかければ先程言いましたような手段で神託の盾を追い払い謡将と共にアクゼリュスに向かうことも出来るでしょうが、それでは和平に向かうようにとの陛下の意向に背くことになります・・・いかがされますか、ルーク様?」
「う~ん・・・」
それでいかにその案が妥当なのかをメリットデメリット併せて話しどう思うかを尋ねるカノンに、ルークは少し考え込む様子を浮かべる。
「・・・今の状況じゃそれしかないってんならそうするって言いたいけれど、大丈夫でしょうか謡将?下手をすると自分の部下達に殺される可能性が出てきますが・・・」
「何、心配はいらぬ。こちらも承知の上だ」
「・・・なら決まりだ。謡将を囮にして俺達は陸路を行くぞ」
「はい、わかりましたルーク様」
それで確認するように声を向けたルークにヴァンは自信に満ちた声と微笑で是と返し、カノンにそうすると視線を向け頷く。
「兄さん・・・」
「心配するなティア、私は死なん・・・では私は船に乗る、アクゼリュスでまた会おう・・・ティア、ルーク」
その決定にティアが心配げに声をかけるが、そのままの笑みと声で励ましをかけてからヴァンは挨拶を交わして場を立ち去っていく・・・
「では我々も行きましょう、と言いたいのですが一つお聞きしてよろしいでしょうか?」
「俺にか?」
「はい・・・謡将は貴方に対し親しげに話をしていましたが、貴方はどこか線を引いたかのように頑なな態度を崩しませんでした。聞けば貴方にとっての剣の師とのことですが・・・何故でしょうか?」
「何故、ね・・・」
ヴァンの姿が見えなくなりジェイドが出発前にとルークのヴァンに対しての態度の訳を問うと、ルークはなんとも言えない表情で頭をかく。








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