世界の奔流の一幕に聖闘士の影

「そうね・・・その意見に関しては私も同意するわ。ただ兄さんを狙っただけだというのにあんなに殴るような人達相手に仲良くしたいなんて思わないもの」
「っ・・・ティア・・・!」
そこにティアも不機嫌だと全面に押し出し同意するが、ヴァンはその言葉にたまらず苦そうな顔を浮かべる。
「何、兄さん?・・・そもそも兄さんも怒っていいはずよ、ずっと牢の中に入れられていたんだから」
「・・・それをお前が言うのか、ティア?言葉を返すようだが私が牢の中に入れられたそもそもの理由は、お前がファブレ邸に来てまで私を襲った理由についてハッキリしないからだ。お前はその程度と言うかもしれぬが、事実私は大詠師から相当に頭を下げさせられたと言われたのだ。お前も今この場にいられるのはそういった事情があってのことと大詠師から聞いていないのか?」
「えっ・・・モース様がそんなことを・・・?」
そんな様子にティアが傲慢に強気を見せればと言うが、ヴァンが静かにそんなことを言える立場にないとモースの行動を語るときょとんと首を傾げる姿に更に苦そうな表情に変わる。
「・・・どうやら聞いてないようだな」
「横からの口出しになるが、そんな裏事情を言った所でこの嬢ちゃんが心から理解出来るとも思わなかったから言わなかったんだろ。大詠師サマは。むしろそんな下手に出るなんてってキムラスカに対して怒りを浮かべる姿を想像したから黙ったんじゃねーのか?また変ないさかいが起きることを避ける為によ」
「ちょっと、何を「・・・有り得ない話ではない、か」・・・兄さん・・・!?」
そして無念そうに言葉を漏らした時にデスマスクが自身の予想を口にした事にヴァンはティアの抗議の声を遮り納得し、身内に裏切られたとばかりに衝撃そうにティアは兄を見る。
「何信じられないって顔してんだ?むしろ裏切られたのはこっちの兄貴の方だろ。何せ大詠師なんてお偉方に信頼出来ないなんて言われたも同然の事をされたって知ったんだからな」
「ち、違っ!?モース様は私を信頼してくださってるわ!現に私に任務を任せてくださったのだから!」
「任務を?・・・・・・成程、そういうことか・・・」
「えっ・・・兄さん・・・?」
そこでデスマスクは悪どい笑みを浮かべ信頼がないことについて指摘をしティアはたまらず焦りに否定をするが、任務と出た単語に真剣そうに重くヴァンが反応したことに不安げに声を上げる。
「・・・いや、なんでもない。それよりティアよ。今回の旅はお前も聞いたと思うが、我らが起こしたことの不始末を挽回するためのもの・・・そこでアクゼリュスに着いた時、私に今の話からどのように考え行動したのか・・・聞かせてはくれないか?」
「え?・・・どういうことかは分からないけれど、分かったわ・・・」
しかし意味深でいて真剣に問いを向けてくるヴァンにティアは意味がわからないと首を傾げながら了承を返した。















・・・それからは妙な空気になり会話もなくなり、カノン達を除き誰も視線を合わせる事なく時間は過ぎていった。



「・・・待たせたな、カノン」
「準備は整われましたか?」
「あぁ、大丈夫だ」
それでルークが屋敷の中から出てきた事でカノンが応対する中、ルークに一同の視線が集まる。
「それでは早速出立、と申し上げたいのですが少々問題が起きました」
「問題?なんだ?」
「本来でしたら船でケセドニアに向かいカイツールの港に向かう進路を取るのが最短の道筋なのですが、洋上に神託の盾の船が進路を塞ぐように配置されているとの報告が入りました。神託の盾が導師を狙った物か我々を狙った物かのどちらかは定かではありませんが、このまま船でケセドニアに無策で向かうのは危険かと思われます」
「はっ?それじゃあアクゼリュスに行けねぇじゃねぇか・・・」
それでカノンが出発の前に障害があると切り出したことに、ルークが眉間にシワを寄せ頭をかく。どうしたものかと思い。







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