世界の奔流の一幕に聖闘士の影

・・・導師を和平の仲介の為にダアトより連れてきたマルクト皇帝の名代ジェイド=カーティスがバチカルに来てから一夜が明け、バチカル城の中の謁見の間には人が集まってきていた。



(全く・・・私も共にアクゼリュスに向かう方がいいというのは何度も言ったはずなのに、何故お父様は聞き分けていただくないのでしょうか・・・)
その中で王女としてインゴベルトの隣の席に座りながらも、ナタリアはその父が自分の判断に反対をしていることに不満だと表情を険しくしていた・・・アクゼリュス救援の為に求められた和平。そして奇しくも預言には聖なる焔の光と名を冠するルークがアクゼリュスに行くことで繁栄を得られると詠まれている。そんな国と国に関連した上で預言に詠まれた重要な事柄であるアクゼリュス救援に自分は行くことは出来ず、ルークだけで行く事になることに。
(・・・まぁいいですわ。後でまた私を連れていくように申し上げますし、お父様がダメでもルークを説得すれば私を連れていってくれるはずです・・・!)
しかしナタリアはすぐに心を切り替え表情を引き締める。ルークさえ説得出来れば自分も連れていくと言ってくれるはずだと。









・・・そのようにナタリアが考えている中、謁見の間には続々と人が集まっていき残るはルークに公爵、それとモースにキムラスカにファブレ邸の襲撃犯として連れてこられたティアのみとなった。



「・・・お待たせしました、陛下」
「うむ、よく来たな」
そして公爵を先頭に四人は謁見の間に入ってきたわけだが、ティアは隠しているつもりだろうがルークの方に苛立ったような視線を向けている。
「では早速始めよう・・・」
しかしその視線には誰も指摘することなくインゴベルトは話を始める・・・












・・・それでルークをこの謁見の間に呼び出した訳であるアクゼリュス救援に加え、預言の事についてまで話は進んだ。



「・・・それでルークよ。お前にはアクゼリュスに行ってもらいたいのだが、少し条件を飲んでもらわなければならないことがある」
「・・・なんですか?」
インゴベルトはそこまで言って苦い顔を浮かべ条件と切り出し、ルークは訝しげに返す。
「・・・そなたが屋敷を出ることになったティア=グランツの事をよく思っていないというのはクリムゾンより聞いておる。だがティア=グランツはそのつもりはなかったと言っておりモースもどうにか挽回の機会をと与えてほしいと、今牢にいるヴァンと共にアクゼリュス行きに同行をさせることになったのだ」
「・・・断ることは出来ない、それを飲めと言うんですね?」
「うむ、そなたの気持ちも分かるがこれは受けてもらう」
「・・・っ」
「やれやれ・・・」
その姿にインゴベルトも言い出しにくそうに同行せざるを得ない訳を言い渡しルークもなんとも言えないように言葉を漏らすが、ティアは明らかにルークに対し見え見えの敵意の視線を向けて端で見ていたジェイドは仕方なさそうに声を漏らす。
「・・・分かりました、そういうことなら」
「うむ、すまぬな・・・それで今申し上げた二人にジェイド=カーティス大佐と共にアクゼリュスに向かってもらう」
「待ってくださいお父様、やはり私も一緒に・・・」
「それはならんと何度も言ったはず!」
「・・・っ」
ルークは平然とした様子で頷きインゴベルトは話を進めていくが、同行者について話が行った所でナタリアが口を挟むがすぐさま一喝されて苦々しげにルークに視線を向ける。が・・・
「では陛下、ルークには早速出立の準備をさせたいと思いますので退出を」
「うむ、ヴァン達は城の前で待たせておくから準備が出来たらそちらに来なさい」
「はい、失礼します」
「・・・っ」
すかさず公爵が間に入りさっさと出立するように言うと、すぐに場は流れてルークが頭を下げて場を後にしていく姿にナタリアは何も言えなかった・・・









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