聖闘士の暗躍に世界の流れは変わり出す

「・・・公爵様、よろしいでしょうか?」
「なんだ、カノン?」
その空気にカノンがうやうやしく発言の許可を求め、公爵も許可を与える。
「これは私個人として感じた事なのですが・・・アッシュは『ルーク=フォン=ファブレ』としての時間を奪われた事で、ルーク様に対しての嫉妬を抱かれたのではないかと思われます」
「っ!?」
「・・・嫉妬、だと・・・!?」
それでアッシュのルークに対する気持ちは嫉妬と予想を述べたカノンに、アッシュは目を剥き公爵も何をと戸惑いに声を漏らす。
「いえ、嫉妬というには少し語弊があります。正確には預言による死以外で本来受けられたはずのファブレでの幸せ・・・それを自身の代わりに受けている事が気に食わなかったのではと私は思いました。そして今も尚アッシュは戻りたいと思っていると感じました。ルーク様がいないファブレ、そして預言に詠まれた未来など関係無いキムラスカへと」
「てめぇ今すぐその口を閉じろ!・・・くそっ、いい加減に離しやがれ!」
「手を離せばカノンに殴りかかるのは容易に想像出来ますので、そのような事などされては話が進みませんので離すつもりはありません」
「・・・ぐっ、があぁぁぁっ・・・この細い体になんで、こんな力があるんだ・・・っ!」
そこですぐに予想に正しい訂正を口にするカノンにアッシュは怒りを向けるが、微動だに動く事も出来ず自分を押さえるムウに怒声を向ける。だが涼しい顔で全く意に介さず返すムウになんとか体を動かそうと声を上げるが、全く動かない体に苦悶の声へと変わっていく。
「・・・預言の事など関係なく幸せを享受、か。そしてルークがそれを受けている事が気に食わない、と・・・耳が痛い話だが、ルークに対しての一方的な恨み辛みをぶつけてくる今の姿からすれば全く有り得ない話とも言えぬやもな・・・」
「それだけではありません・・・アッシュがここまでルーク様に怒りをぶつける理由には、ナタリア様への懸想の念もあると思われます。むしろ一番強い理由、と言ってもおかしくはないやもしれません」
「・・・っ!」
「・・・ナタリア様、か。成程、あの方の事もあるからか。それはあの方のこだわりを思えば確かに納得出来る、昔の二人は我らが決めた婚約上であるにも関わらずそれ以上に仲睦まじい様子を見せていたからな・・・」
公爵はその話に苦々しく納得をしていたがナタリアとカノンから出た瞬間アッシュの顔が強張り、公爵もまた更に納得して噛み締めるようゆっくり頷く。



『ナタリア・・・確か前にカノンが『ルーク』の婚約者って言ってたこの国の王女様だったか?』
『あぁ、記憶を失う前・・・今となってはアッシュがダアトに行く前はそれこそ真剣に将来を誓いあう程の仲だったらしく、ルークがファブレに来てからはその記憶・・・特に二人で誓いあった時の言葉を思い出すように何度も何度も言ってきたらしい。そしてそれはこの様子から見て、今もあまり変わらないようだ』
『・・・あまり感心出来る事とは言えませんね、それは。個人として記憶という物を求める気持ちは分からないでもありませんが、ルークが別人という事は知らないにしても記憶だけを求めるのは公人としても個人として見ても私はあまり望まれる事ではないと思います』
そんな中でデスマスク達はテレパシーで会話をするが、ナタリアに対してのムウの意見は厳しい。記憶を持たない人間に対しての態度ではないだけに。
『・・・今は話はやめないか?そのナタリアとかいう人物について聞くより場の流れを把握する方が大事かと思うが・・・』
『そうだな、ミロの言う通りだ。話に集中するぞ』
話が少しナタリアの方に行きつつあったことからミロがその流れを止め、アイオロスも同意したことで話に意識を皆が戻す。






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