聖闘士の暗躍に世界の流れは変わり出す

「・・・この様子は肯定、と見るべきでしょう。そしてそうした理由としてはファブレの家を見限るだけの物がある、と見ていますが、公爵様はそうするだけの理由があるとお思いですか?」
「・・・っ、まさか・・・!」
「心当たりがおありのようですね」
アイオロスがその空気にあえて口を挟みファブレを出た理由の心当たりについて聞くと、次第に体を震えさせ目を見開いていく姿にそうだと態度で理解する。
「・・・私の口からはあえてそれが何なのかと言うことはお聞き出来ません。ですが一つ言えることは、謡将がそのような事をしてまでアッシュをさらいルーク様をファブレに置いた理由・・・これは公爵様の、引いてはキムラスカにダアトの本意ではない事と思われます」
「・・・それは・・・」
「お答えにくい質問であることは重々承知しています。おそらく私などには話すことが出来ない物なのでしょう・・・ですがだからこそこのアッシュという存在には話していただかねばならないのです。謡将に付いていった理由にそうした理由という物を」
「・・・それは、どうしても明らかにしなければならないことだと言うのか・・・?」
カノンは苦い表情を浮かべあえて言うといった空気を滲ませる言葉に、公爵も苦しいといった表情で伺うようにカノンを見る。
「・・・そうでなければこの場にアッシュを連れてきた理由というものが見失われてしまいます。あくまでこの場にはムウとミロの二人が神託の盾のいるタルタロスに忍び込んでもらい連れてきてもらったもので、今は何事もないと見られているでしょうがこのまま夜が明ければ確実にその身柄が無くなっていることに神託の盾は疑問に思い捜索の手を回してくると思われます」
「そうなのか?・・・そう言えば自然にこの場に連れてこられていたから気にしていなかったが、そんな事があった上でここに来ていたとは・・・」
そんな顔に場に内密に連れてきた経緯を明かすカノンに、公爵もふと考えていなかったとハッとした顔になる。だがその発言にアッシュは痛みに加え苦い顔を浮かべていた。



・・・そう、ムウとミロの二人がタルタロスに張り付いていた理由とはアッシュの行方を見逃さない為だ。それでバチカルの近くにまで来た時にタイミングを計ってムウがアッシュの気配を探りテレポーテーションでタルタロスに入り込み、即行でアッシュを気絶させてまたテレポーテーションで外に出てバチカルにまで連れてきたという訳だ。無論アッシュも気が付いた時には暴れだした訳だが、ムウだけでなくミロも加わって体を押さえられて勝てる訳がなかった。



「ですからこそ今日この場で明らかにしなければならないのです。謡将の思惑という物、その上で彼がどのような本音を思っているのかという物を。そしてそれらを受けた上で決断をするべきは事実を知った公爵様、貴方以外にはいません。彼を生かすか・・・殺すかを」
「「!」」
それらの行動の意味は今の為、故にカノンは冷静な言葉で残酷な決断を迫り公爵とアッシュの驚きを誘った。
「公爵様が何を私達に隠しているか、それは私の知るところではございません。ですが本物の『ルーク=フォン=ファブレ』がダアトにいたという事実・・・これらははっきりと確かな物としました。もしここで彼が事情にもよりますが恭順の態度を示してキムラスカに戻るというならファブレに戻すことも出来ましょうが、そうでないというなら彼はダアトに亡命したばかりか獅子心中の虫と言った謡将の手先としてファブレ・・・引いてはキムラスカに弓引く存在と言えます」
「・・・だから私がそれを決めねばならぬ、と言うのか?」
「彼の本心に何を知っているのか、その答えによっては」
「・・・っ!」
更に執事然としながらも公爵に厳しく言葉を向けるカノンが視線をアッシュに向けると、ビクッと体を震わせる。










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