聖闘士の暗躍に世界の流れは変わり出す

‘ピッ!’
「うぐぁぁぁぁぁぁっ!?」
「アッシュ!?」
・・・ミロが爪が伸びた指先を向け技の名を叫ぶと、アッシュの胸の服の部分に小さな針の穴のような傷がつき苦痛に満ちた絶叫が室内に響いた。必死にアッシュは身じろぎしようとするがムウに押さえられている為必死に頭を振る以外に出来ずにいて公爵は何事かと心配げに近付こうとするが、カノンがすかさず制止をかけるよう手を出した事に足を止める。
「我慢なされてください、公爵様。今ミロが行っているのはアッシュとして協力を拒否するその心を打ち砕く為の物・・・私もこのようなことなど致したくはございませんでしたが、公爵様を目の前にしてまで拒否を示したアッシュには言葉でだけなどどいった生半可な説得は通じないでしょう」
「・・・だから今こうしているというのか?それにしてもこの痛がりようは尋常ではないぞ、カノン・・・」
「・・・公爵様とアッシュの為にも説明致しますが、私の放ったスカーレットニードルは小さな針の穴のような傷くらいしかつきませんがその傷は蠍の毒が全身に流れたかのような激痛を生みます・・・一発だけでも相当な衝撃ですが数を受ければ受けるほど激痛は更に増していき、技の完成を意味する十五発目を受ける前にその痛みで大抵の者は死に至ります・・・が、一発程度ならまだ健常な者は死にません」
「そ、それは真か!?」
「はい。ですが今言ったように常人なら三発か、それ以上耐えれても七か八が精々・・・無理に耐えても十五発全てを受ければその傷痕から血を盛大に吹き出し、死は免れない事態になります」
「!?」
「な、んだと・・・!?」
カノンが普段にない有無を言わせない強さに満ちた声で耐えるように言うが、公爵は気が気でないようで大丈夫かと声を震わせる。その声にミロが技の特性と共にその結果を告げると、公爵は驚きに目を剥いてアッシュは痛みに顔を歪めながらミロを睨み付ける。
「・・・ですが心配はいりません。彼がこちらの言うことを聞いていただくというならこれ以上スカーレットニードルを放つつもりはございません」
「そ、そうなのか?」
「・・・ハッ、十五発受ければ死ぬだと?こんなちゃちな傷で俺が死ぬか!こんな程度の技、全部受けきってやるよ!」
「ア、アッシュ・・・」
しかしすぐに降参すればやめると言うミロに公爵は安心しかけたが、冷や汗を浮かべながらも挑発の言葉をぶつけてきたアッシュに表情を青ざめさせる。
「・・・いいだろう、望み通り続きを放ってやる」
「待てミロ、その前に聞きたいことがある・・・おい、どうしてお前はそんなに話をする事を拒否すんだ?お前を連れていったヴァンに対してじゃねぇのはわかってんだぜ。お前に会った・・・まぁ黄金聖衣なんて言ってもわかんねぇだろうが、そいつをまとった奴から聞いてんだからな」
「っ、あの鎧の野郎達の事を知ってやがるのかてめぇ!?」
「ま、待て!・・・まさか『ルーク』をさらったのはヴァンと言うのか・・・!?」
「っ・・・!」
そんな姿に再度ミロはスカーレットニードルを放とうと指を向けかけるが、デスマスクが手を掴み制止をかけてからアッシュに黄金聖衣の事を漏らしてから話しかける。その言葉に動揺したアッシュは食って掛かろうとするが、公爵がさりげに混ぜられたヴァンという単語に気付いた事にしまったと言わんばかりにハッとした表情に変わった。
「・・・状況から見てそうだと私達は判断しました。そもそも『鮮血のアッシュ』の名は六神将の名として知れ渡っていて、その六神将は謡将の配下としてもまた名が知れ渡っています。これだけの状況が揃っていて謡将がアッシュの顔だけは知らないなどと言うのは有り得ない上、ルーク様と瓜二つな存在を報告しないなどという事がそれらを裏付けているかと・・・」
「・・・では私は、獅子心中の虫を招き入れていたと言うのか・・・?」
「おそらく謡将は初めからそのつもりだったのでしょう。そしてこの反応から見てアッシュが謡将の元に行ったのは少なからずアッシュ自身の選択でもあったのではないかと私は見ました」
「っ・・・そうなのか、アッシュ・・・?」
「・・・」
カノンがそうだろうと予測を立てた上でアッシュが選択したのもあるだろうと言うと、公爵は不安そうにアッシュに問い掛ける。だがアッシュは気まずげに視線を背けるばかり。








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