不死鳥よりもたらされる衝撃に双子の片割れは決断する

『では俺はアイオロス達にムウ達の元へ行き、アクゼリュスへと向かおう・・・じゃあな』
『待て一輝・・・アイオロス達はそろそろケセドニアに辿り着くくらいの時間帯になる。行き違いを防ぎたいなら今からケセドニアに行けば間に合うだろう』
『わかった、ではな』
意志を確認出来た所で一輝はさっさと行こうと足を運ぶが、ケセドニアで待つようカノンが呼び止め待機を勧めた事に頷きそのまま場を立ち去っていった・・・






「・・・はっ!ここは・・・」
「戻ったか、元の場に」
と、今まで見ていた光景がケセドニアの街中へと戻ったことに三人はハッとなって辺りを見渡す。
「分かったか、俺が伝えた物がどのような物か」
「・・・そりゃ分かったが、何も幻魔拳でなくともよかったじゃねぇか。カノンに口頭で説明したようによ」
「説明の手間分の時間を省いただけだ。現に幻魔拳を放ってから数秒程しか時間は経っていない」
「・・・ま、ぐだぐだ説明された所でだれるだけか。それにこの世界の住民から直に聞いた方が真実味もあるだろうしな」
一輝はそんな三人に話を把握したことを確認するが、その手段を非難するデスマスクに全く悪びれず返し仕方なさそうに言葉を下げさせる。
「・・・しかしお前がアクゼリュスの救援を申し出るとはな。カノンではないが、正直意外だと私も思ったな」
「・・・哀れに思ったからだ、アクゼリュスの住民が・・・住民からしてみれば何も知らされぬまま地獄にいる。その気になれば人々を救うこともダアトが出来るにも関わらずだ。そして信じているはずのダアトから切り捨てられる・・・それも嬉々としてだ」
「・・・確かに哀れと言えるな。世界の繁栄の為の犠牲にとは言え、これはあまりにも酷だ」
「そのような悪鬼の所業、流石に黙って見過ごせるはずもない・・・人の痛みなど全く省みる事もなく、知ろうともしない者の事などな・・・!」
「・・・成程」
続いてカミュが改めてアクゼリュス行きの意外性を驚きと口にするが、一輝の怒りを滲ませた眼と答えに思わず納得した・・・かつて地獄を見てきた一輝だからこそ、その地獄をロクに知らぬ者に運命を歪め決められる理不尽に対する想いがあると見えただけに。
「・・・少々長くなったが、話はここまでだ。カノンがバチカルで待っている、行ってやれ。俺はムウ達に伝言を伝えた後、一足先にアクゼリュスへと向かわせてもらう」
「あぁ、またアクゼリュスで会おう。一輝」
そんな空気をまといながらも話を終わらせ一輝は場を後にしていき、アイオロスはその後ろ姿に声をかける。またの再会をアクゼリュスとすると。
「・・・さて、戻るか・・・って言いたい所だが、どうするアイオロス?一輝の見せたもんからして障気がどんだけのものかはわかんねぇが、アクゼリュスの住民の救出は出来るだけ早い方がいいはずだが、またアテナに救援用の援軍でも派遣してもらった方がいいんじゃねぇか?」
「あぁ、俺もそう思っていた。だが今すぐに説明するにしても多少時間がかかるから、大佐に怪しまれぬよう合流した上で船に乗りバチカルに向かう途中で話をつけよう」
「・・・そいつが妥当か、んじゃ行くか」
三人に再びなりデスマスクが援軍を更にと発案するが、後でにしようとアイオロスが理由付きで言ったことに頷いて三人は場を後にしていった・・・















・・・それでアイオロス達がケセドニアからバチカルまで向かう船に出発した後、一輝は実は比較的近くに来ていたムウ達に接触していた。



「・・・成程、話はわかりました。この後我らもバチカルに向かうことになりますから、その時にカノンから決意の程を伺いましょう」
「それでお前はアクゼリュスに向かうとの事だが、どうだお前も?俺達と一緒に行動してから行くか?」
「生憎だが俺は急ぐ。それにお前達だけでも十分やれることだろう・・・ではな」
・・・そして一連の流れを説明し終わり納得したムウ達だが、ミロの誘いに一輝は信頼を寄せた断りを返した上で場を後にする。
「意外と一輝も情に厚いというか、何て言うかな・・・」
「人々を助けるために最善の手段を取っているのですからそれはよしとしましょう・・・それよりバチカルが近い今、我々の役目を果たす時も近い。そろそろですよ、ミロ」
「分かっているよムウ・・・何せこれが出来るかどうかで決まるんだからな」
そんな姿を見て苦笑するミロにムウが軽くなだめるよう微笑を浮かべると、すぐに表情を穏やかな物に変えたかと思えば少し遠目に見えて停止しているタルタロスを鋭い視線で見据えていた・・・









END









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