不死鳥よりもたらされる衝撃に双子の片割れは決断する

・・・だがその一輝のすぐに冷めるとは到底思えなかった怒りは話が進むにつれ、否応なしに鎮火していった。



まず魔界という単語について一輝が事の経緯を漏らさぬようしっかりとモースに質問攻めをすれば、元々オールドラントという世界は譜業の発達が創世歴時代に最高期になったがそうしていくにつれ障気がどんどんと世界中に満ちていき、その障気から逃れるために当時の技術の粋を集めて外殻大地という形で地面を空に押し上げ、今も地表に残っていて障気により液状化した大地の事を魔界と事実を知る者は言うようになった・・・とのことだった。

この事実には話を聞いてた一輝も、アイオロス達三人も驚きに目を丸くする以外になかった。そのような技術がこの世界、それも二千年前に存在していて今も尚外殻大地を浮かせ続けていると言うのだから。

だが続いたアクゼリュス消滅に両国による戦争、という話を聞いた時に一輝の怒りは再び再燃しアイオロス達も苦い顔へと変わってしまった・・・何せ今モースが知りうる預言にはこれより聖なる焔の光、すなわち古代イスパニア語でその名を冠しているというルークが外殻大地を支えているという大事な場所でもあるセフィロトと共に消滅すればキムラスカとマルクトが戦争をすることになり・・・最終的にはキムラスカがマルクトを滅ぼして繁栄を手にするという中身が詠まれていて、それを実現する為にモースはバチカルに和平の邪魔をしに来たと言うのだから・・・






「・・・俺が人の事を言えた義理じゃねぇと思うが、こいつは心底から救いようがねぇな」
「・・・確かにな。いかに大義名分があるとは言えこの男がやろうとしていることは大量殺戮の計画、それを全く罪悪感もなくやらんと出来るとは・・・」
「これも宗教に携わる者としての一種の狂信者の形、と言えるのだろうが・・・この世界での宗教は地球と違いローレライ教団ほぼ一つのみで、全世界全ての住民が同じと言わずとも同じ信者と言えるだろうにそれを全く考えもしないとはな・・・」
・・・そこまで話を聞いた所で三人は表情を取り繕う事が出来ず、虚ろな顔のモースに対して険しい表情を浮かべていた。
『・・・』
「ま、そう考えてるのは一輝もじゃあるだろうが・・・おい、まさかここで大詠師様を殺す気か?こいつ・・・」
それで現にモースと対していた一輝は小宇宙を爆発させる寸前にまで怒りをいかせていたので、デスマスクはその行動に注目していたがふと一輝はその姿に背を向け小宇宙を抑えて入口へと歩き出す。
『・・・貴様のような人の皮を被った獣などこの場で誅してやりたいところだが、生憎カノンの意向を無視する訳にはいかぬ上にあくまでこの場に来たのは顔を拝む為だけ・・・この場はこれ以上は何もせずに去ってやろう。だが時が来ればいずれ俺は必ず再び貴様の元へ現れよう・・・貴様を誅しにな・・・!』
・・・一輝にしては他者を立てていると同時に、一輝らしい言葉であった。
役目を忘れずカノンの事を口にしたが、自分の手でケリはつけるとぎらついた視線だけを向けながら一輝は宣言をしてその部屋を後にしていった。
「・・・一輝らしい、な」
「あぁ・・・ま、これはあえて止める必要はねぇだろ。目的が目的な以上、大詠師様は俺らと対することは間違いねぇし生半可な事で止まっちゃくれないだろうしな」
「・・・そうするか」
一人部屋に残ったモースが何があったのかとキョロキョロと意識を取り戻して周りを不思議そうに見渡す光景を尻目に、三人は一輝の行動を黙認する事にした。モースがいかな結末を迎えるか、それが決定したと分かりながら。
「・・・それよりこの様子ならこの後カノンに会うのだろう、一輝は。カノンはどのような結論を下したのだ?」
「・・・お?なんか光景が変わっていくぜ」
「・・・・・・これは、街の一角のようだな。察するにバチカルの中だと思うが、一輝が一人で・・・む、カノンが来たぞ」
それで今度は話題に出てきたカノンの事だとカミュが口にすると、三人に見える光景がデスマスクとアイオロスの言うように変化して一人待っていた一輝の元に難しそうに眉を寄せたカノンが姿を見せた。
『・・・バチカルに来ていたのか、一輝・・・』
『あぁ、大詠師の顔を拝みにな』
『なにっ・・・!?』
『言いたいことはあるだろうが、まずは俺の話を聞け。これはお前にとって避けては通れぬ話だ』
再会の挨拶もなく声をかけるカノンに一輝は早速本題に入り話を進めていく、驚くその姿に先程の話をするべく・・・








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