不死鳥よりもたらされる衝撃に双子の片割れは決断する

『・・・ここか、大詠師とやらが今いる部屋は』
「む・・・大詠師?」
「大詠師って確か、あの嬢ちゃんを導師様のスパイに仕立て上げてる奴の事だよな?」
「あぁ・・・どうやら一輝の目的は大詠師に会いに来た事らしいが、一体何を・・・?」
と、ある部屋の扉の前でふと立ち止まり呟く一輝にカミュが反応し、デスマスクの確認の声に考え込む。
「む・・・どうやら中に入るぞ」
だがそれもアイオロスからの報告にカミュは思考を止め、ドアに手をかける一輝に注目する。



‘ガチャッ’
『ん?なん『鳳凰幻魔拳!』っ・・・』
『今の貴様には俺の姿は見えていない上に、俺が場を離れれば貴様は何事もなかったように再び意識を取り戻す・・・さぁ、答えてもらうぞ。俺の質問に』
『・・・わかった』
「・・・問答無用で幻魔拳かよ、容赦ねぇな」
「・・・私は一輝が何故そこまでの行動を大詠師に対し取るのか、それが気になる。今の一輝の表情はいつにも増して険しいように見えるから尚更にな」
それでドアを開けた先にいた大詠師モースが音に気付き振り返ろうとした瞬間一輝は幻魔拳を放ち、その精神を操ることに成功した。その光景を見ていたデスマスクはえげつないと表情を歪め、カミュは一輝の表情の険しさも相まって対峙する虚ろな目をしたモースにも注目する。
『聞こう・・・お前にとって導師のスパイをしているタトリン夫妻とはなんだ?』
『・・・あの者らは私にとって使い勝手のいい捨て駒であり、操りやすい人形だ。夫妻は借金をする事に何ら抵抗を持たず、アニスは私の言うことを聞く以外に出来ん・・・もし私の意図通り動かずとも教団には他にも何も考えようともしない愚か者などいくらでもいる。役に立たないようであればいつでもすげ替える事の出来る惜しくもない捨て駒よ・・・タトリン一家は・・・』
『っ・・・!』
「・・・一輝の表情が更に険しくなりやがった」
「・・・分からんでもないな、一輝の気持ちは」
「あぁ・・・これほどの事を平然と思える大詠師を好ましいと思えるはずがない・・・」
そこで一輝はタトリン一家についての質問をするのだが、虚ろながらも全く情も何もない非道な返答を返すモースに三人も程度の差はあれ不快げに表情を歪める。元々から非情な手段に対してそこまで抵抗のないデスマスクだが、それでも自身が手を下さないという方向性が違うその在り方は不愉快であったようだ。
『・・・なら次の質問だ。このバチカルには導師がダアトを出奔してより訪れることを決めたそうだが、何が狙いだ?』
『それは・・・』



『キムラスカと和平を結ばんとするマルクトの歩み寄りを逆手に取り、預言通りにアクゼリュスを消滅させ両国に戦争させる為よ』



「はっ・・・!?・・・いや、魔界とか気になる単語があるんだがそれ以上に気になる事があるんだが・・・!」
「・・・アクゼリュスを消滅させるだと・・・そしてキムラスカとマルクトの戦争が預言に詠まれていると・・・」
「・・・そのようなことがあっていいというのか・・・!?」
・・・続けて一輝はバチカルに来たわけを問うのだが、この世界に来てから最大級の衝撃が三人を襲った。アクゼリュスの消滅、そして戦争になると。
三人は唖然とした様子でその光景を見ていたが、そこで一輝のまとう空気が更に険悪な物となり小宇宙すらも漂い始めた。
『・・・本来なら渾身の力を持って精神を打ち砕いてやる所だが、まだ聞かねばならぬことがある・・・魔界について、戦争が詠まれている預言とやらについて答えろ・・・!』
辛うじて一輝はギリギリの所で怒りを爆発させずに我慢している、その上で聞くべき事を言葉にしている。そんな爆発寸前の姿に意識がないことがせめてもの救いとも言うべきモースはまた素直に語り出す・・・それらの言葉がどのような意味を指し示すのかを・・・










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