「僕はマルクトに乞われて和平を結ぶ仲介をするためにダアトを出ました。ただその理由は訳あって言えませんが、その理由もあってピオニー陛下からはその意思が本物であると感じました・・・ですがこの旅でアイオロスさん達と出会ってから色々お話をして、思ったんです。ジェイドには役目を果たそうとする気はあっても、相手側に対する配慮などなく結ばせる為になりふり構うつもりは一切ないと」
「イオン様・・・それはあたしも感じました、ルーク様を無理に協力させようとした時もですけどそこで実力行使に出ようとしたことも・・・それに今だから思うんです。イオン様がもしマルクトの申し出を断ったら、それこそルーク様のように実力行使に出てきたんじゃないかって・・・」
「っ・・・それは・・・」
「多分嬢ちゃんの言う通りだと思いますよ、導師。その時のやり取りは想像でしかありませんが、導師は和平の仲介を願われて二つ返事で了承を返したのではありませんか？」
「はい、そうですが・・・」
「ありがとうございます。ですがそれで拒否を示していたらそれこそルーク様を軟禁しようとした時のよう、丁寧な言葉で連れてきたといったように振る舞いその実は強制的に協力をさせられていた可能性が高かったでしょう。もっと言うならマルクトに連れていきさえすれば、ピオニー陛下に説得を丸投げ出来るからそれでいいとタカをくくってダアトに来ていた可能性すらある」
「っ・・・！」
イオンは思い詰めた表情でジェイドの態度に関してこの旅で感じた不審を打ち明けると、アニスも同様の表情で同意しつつ自分達の身の危険もあったのではと漏らす。その予想に否定したいと首を横に振りかけるイオンだが、デスマスクからその時のもしもを仮定した言葉にたまらず驚き絶句して目を見開いた。
「・・・導師の心中、お察しします。ですが私も、そしてアイオロスも同じ考えです」
「っ・・・アイオロスさんも？」
「・・・残念ながら。そしてこの場だからこそ言いますが、彼の考えには遠慮というものがないように思えます。態度に口調こそは丁寧に振る舞っていますが、言っていることは暴言に放言といった挑戦的な物ばかり・・・あれだけの事を堂々と言えるしやれる彼のことですから、おそらくバチカルに行ったところで目的を達成する為に多少沈黙はしても本当の意味で遠慮などする事はないでしょう」
「！！・・・そこまで、言うんですか・・・！？」
続けてカミュがアイオロスも同意見と声をかけるとイオンは信じられないといった様子で視線を向けるが、当のアイオロスがジェイドに対する厳しい言葉と共にこれからの不安を口にしたことに表情を青くして驚きに身を震わす。
「・・・これはあくまでも我々の憶測です。しかし導師も感じられていたのでしょう、そういった危惧を？」
「・・・はい。ですがここまでとは思わなかったので・・・より不安になりました。これからバチカルに行き和平を成功させるのが・・・」
「・・・導師、その特性上和平にマルクトが踏み切った理由を言えない事や責任があることから言いたくはないのは分かります。ですがあえてこの場だからこそ聞きます。我々に何故マルクトが和平に踏み切ったのか、その理由をお話しする訳にはいきませんか？」
「アイオロスさん・・・？」
予想以上といったその様子にアイオロスが言葉をかけると力ないイオンの肯定の言葉に、意を決したように和平の理由を問い掛ける。アニスが何をと視線を向ける中、アイオロスは更に続ける。
「我々はキムラスカの重職についているわけでもありませんし、この和平に何ら関わっている訳でもありません。ですが今のピリピリした両国の関係を考えてあえて和平に踏み切る理由とはなんなのか、そして導師が何故仲介に賛同して成功させたいと思ったのか・・・その理由が知りたいのです。無論知り合って時間もない我々に言う程の信頼関係がないのは重々承知していますので、断っていただいても構いません」
「イオン様・・・」
それでいかに真剣に話を聞きたいのか、まっすぐにイオンを見つめながら言葉を向けるアイオロスにアニスは同じく何とも言えない複雑な表情を向ける。









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