不死鳥よりもたらされる衝撃に双子の片割れは決断する

「・・・随分な目をするものだな。私は敵を退けただけだというのに」
「随分?いえいえ、当然でしょう。貴方、いえ貴殿方の武力は脅威と言わざるを得ません。それなのに安穏となど出来ませんよ」
「・・・ふぅ」
「アイオロスさん・・・」
その目に対し軽く批難の言葉を向けるが、多大な警戒を露骨に言葉にするジェイド。そんな態度にアイオロスはタメ息を吐き下を向き、イオンが心配そうな声を向ける。
「・・・だからどうした?」
「え?」
「我々の武力が脅威だからどうだと言っているんだ・・・それで我々にどうしてほしいのかもだが、貴方がどうしたいのかと聞いているんだ」
「・・・それは「いや、答えなくていい」・・・っ!」
そして頭を上げまっすぐな表情で質問を投げ掛けるアイオロスだが、ジェイドが返答する前に言葉を遮り強い視線を向ける。
「こちらが目指すのは貴殿方の目指す地でもあるバチカルだ。そこで貴方が何かを言ってもこちらは聞く耳を持つつもりはない。それとも何か手を打つとでも言うのか?・・・もしそうだというなら、こちらも相応の手段を取らせてもらうまでだ」
「っ・・・冗談、ですよ・・・気を悪くされないでください」
そのまま答え次第で今からでも戦うことを辞さないと眼光に鋭さを増しながら言えば、ジェイドはたまらず言葉を濁し首を横に振る・・・流石に圧力を手加減しているとは言え、アイオロスの本気の意志を目の当たりにしてこれ以上露骨な事は出来ないと感じたのだろう。ジェイドからしてアイオロス達に対しての牽制をかけようとしただけなのに、それが命をかけた戦いに発展するような事を避けるために。
「・・・私は部屋に戻る。これ以上顔を合わせていても気まずいだけだろう。では導師、私は失礼します・・・」
「あっ、アイオロスさん・・・」
「・・・では我々も行かせていただきます。それでは・・・」
「あっ・・・カミュさん、デスマスクさん・・・」
「「・・・」」
と、途端に空気の重さを感じ取り複雑そうな顔をしながら頭を振ってアイオロスはイオンに頭を下げてから場を後にする。イオンは呼び止めようと手を出しかけるが、カミュ達もその後に続いて頭を下げてから場を後にしたことに悲し気に手を引く。その光景に原因であるジェイドは素知らぬ風を装い眼鏡に手をかけそっぽを向き、アニスはジェイドにだけ呆れたような視線を向けてからイオンとアイオロス達の方を交互に見ながら複雑そうに表情を歪めていた。






「・・・ままならないものだな。もう少し手加減するべきだったか、あの機械に対して・・・?」
「いや、あれで正解だろ。それに手加減して三人、いや四人で戦った所で面倒が残るだけだ。手伝ってきたらあの眼鏡は恩に着せてくるだろうし、三人で戦った所でどうやったってまた露骨な嫌味だったり皮肉をぶつけてきただろうよ」
「デスマスクの言う通りだろうな。大方さっきの警戒を滲ませた言葉もこちらを下の立場に置くための布石だろう・・・しかしよくも考え付くものだな、精神的な攻めをネチネチと」
・・・それで三人で使う船室に戻ってきた三人だが、疲れたように声を漏らすアイオロスに二人は先程の行動は正解と労うように述べる。カミュに至ってはジェイドへの呆れまでつけてだ。
「しかしまぁ軍人、それも大佐って立場の人間があぁも一般人かどうかを問わず幅を利かせるってのはどうも気に食わねぇな。なぁカミュ。マルクトって国は軍事政治体制って訳じゃないだろ、確か?」
「あぁ、キムラスカもマルクトも国の主である王か皇帝・・・呼び名が変わるくらいだが王権政治の貴族政治だ。軍の発言力はそこまで大きくはない・・・はずだが、皇帝の名代として大佐という身分のあの人物が派遣されたと言うことはそれなりの理由があるということだ。ただ私からしてみればあのような人物を和平の使者に仕立て上げられても困るだけだが、本気で和平の使者として選んだというのなら・・・マルクトの上層部の神経を疑うな。あの大佐は誰であろうが所構わず隙を見つけ、神経を逆撫でするだろうということに目を向けてないということになるのだから」
「おいおい、お前がそこまで言うのかよカミュ・・・ま、俺も同じ意見なんだけどな」
それでデスマスクが確認をするようカミュに声をかけるが、飾ることないマルクト全体にまでもの酷評付きで返ってきた言葉に軽く驚きを浮かべるが、すぐに同感だと笑みを浮かべる。ジェイドを選んだことはおかしいのだと。








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