不死鳥よりもたらされる衝撃に双子の片割れは決断する

「あ~っ・・・案外悪くねぇもんだな、船旅も」
「そうだな、海も穏やかだし気持ちいい。こういった時間は滅多にないから、より一層そう思える」
・・・そしてケセドニアに向かう船の甲板の上で、デスマスクとアイオロスはまどろんだ表情を浮かべていた。
「・・・む・・・」
ただ一人表情を変えずにいたカミュは後ろに何かを感じたのか、振り返る。二人も同時に気付いたようで、カミュに倣い振り返るとそこに現れたのは・・・
「・・・私が来ることを分かっていたのですか?三人とも一斉に振り返るとは・・・」
「俺にアイオロスはカミュが後ろを向いたから何かって思っただけですよ、大佐殿」
「・・・そうですか」
・・・そう、少し驚いたようなジェイドだ。
そんなジェイドにデスマスクは一斉じゃないと意地悪くも丁寧な口調で指摘し、それ以上は突っ込まずジェイドは一言で返す。
「それより何か御用でしょうか?」
「・・・用事と言うほどの物ではありませんよ。ただ貴殿方がいたので近付いてみただけです」
(((よくもまぁ、見え透いた嘘を堂々とつける・・・)))
続いてカミュが何用かと聞き大したことはないと言うが、三人は揃ってそれが嘘と感じていた・・・自分達に近付いて来た時の気配の殺し方、それは良からぬ事とは言わずとも何かを企んでいる物と容易に分かるものだった為に。



(ま、この眼鏡のこった。大方俺らの実力の把握に値踏み辺りでもしようと思ってたんだろうが、少なくともお前に負けるほど俺らは弱くはねぇよ)
それでデスマスクはその訳までもを推測するが、心の中で楽し気に声を上げる。無駄な事だと。
「・・・ところで貴殿方はどこの誰とも知らぬ方にお仕えだとか」
「あん?あの嬢ちゃんから聞いたのか?」
「えぇ、貴殿方の事を知りたいと思い聞いたのですが・・・そこでお聞きしますが、どうですか?貴殿方さえよければマルクトに仕官されませんか?それだけの腕をお持ちなら貴殿方ならすぐに上に行けるでしょうし、軍には私が取り成します「興味ねぇな」・・・っ!」
そんな内心など知らないまますぐさまジェイドはいかにも良案だと言わんばかりに、自身の立場を持ってマルクト軍への勧誘を三人に向けてくる。しかしその言葉はあっさりデスマスクに途中で拒否で返された。
「勘違いすんなよ?別にマルクトが嫌だって言ってんじゃねぇ。俺はその方に仕えるって決めたから仕えてんだ。例えあんたが知る人だろうがそうじゃなかろうとな」
「デスマスクの言う通りだ・・・俺達はその方に忠誠を誓った。それを易々と覆すようなことはしない」
「・・・そうですか」
驚くその姿にデスマスクが自分なりの忠誠があると言えばアイオロスもその言葉にまっすぐな視線で同意し、果てにはカミュまでもが無言で自分も同じだと視線を向けてくる。そこまで言い切られジェイドはなんとも言い難い声を上げる。
「ま、俺個人として言うならあんたの下なんざ真っ平御免だ。あんたと俺の気が合わねぇのはあんたも百も承知だろうが、そんなんで軍に入ったってあんたの下に配属されるのが関の山だろ。それで上官命令の皮肉まみれの嫌味ったらしい命令に使い潰されるなんざ、絶対に嫌だね」
「・・・随分と酷いことをおっしゃるんですね、これでも傷付くんですよ?」
「でもそうしようとしてたのは事実だろ?・・・だってあんた、俺の言葉に否定を返してねぇしな」
「っ・・・!」
それで尚もデスマスクは軽い笑みを浮かべ肩をすくめながら個人的な拒否を再度示すと、ジェイドは悲しいと言うがその言葉の裏をすかさず楽し気に突かれてたまらず口ごもった。
「クク、図星だってか?正直なのはいいことだが、この辺りでやめといた方がいいんじゃねぇか?じゃねぇとボロボロ崩れ落ちちまうぞ?・・・その薄っぺらい仮面がな」
「っ・・・」
更にデスマスクは挑発するようジェイドに近付き覗き込むように顔を近付け、しまいには酷薄な笑みを浮かべその額を指でチョンと軽く小突くよう押す。その明らかに侮辱行為と分かるそれにジェイドはされるがままでいて、ただ表情を複雑そうに歪めるばかりだった。










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