双子の片割れの焔への従事

「・・・カノンの名前聞いてお前いい顔してなかったな。ってことはお前、カノンに何かしてここに来たのか?」
「・・・いや、何もしていないぞ。ただこの役目を譲ってもらっただけだ」
そこで睨み付けるような目で見ながらカノンの事を聞いてくるルークに、内心どうしても役割を奪おうとしていたことを棚にあげ何もなかったとガイは首を振る。
「譲ってもらったって、それってお前が来なきゃならない理由って何かあったのか?」
「え?そ、それは・・・その・・・」
だが更に続いたここにガイが来なければならない理由を問われて、そのルークの心底からの疑問にただ機嫌取りの為に来て大義名分を持っていないガイはしどろもどろと言い訳を探そうとする。
「・・・そう、そうだ!俺が来た方がお前が喜ぶと思ったんだよ!あいつ固いからお前が色々めんどくさいだろうと思ってさ!」
それでようやく思い付いた言い訳はガイが来た方がルークの為であり、カノンをさりげに貶めるという物。さもそうだろうと言わんばかりに声を大きくして近付いてくるガイに、ルークは身を引く。
「・・・ルーク?」
「・・・お前最低だな、ガイ」
「えっ・・・?」
何をと更に前に行くガイだが明らかに軽蔑した目で更に身を引くルークの声に、訳がわからないと目を大きくする。
「お前は俺の為だなんて譲ってもらったとか言ったけど、嘘だろ。譲ってくれるまでお前引こうとしなかっただろ?」
「それは・・・さっきも言ったろ、俺が来た方がいいと思って・・・」
「百歩譲ってそれはいい。けどそれで、カノンを侮辱していい理由にはならない・・・!」
「・・・っ!」
それでルークがカノンとのやり取りを見抜いた上で取っていただろう行動を指摘すれば、ガイは先程の言い訳を盾に出す・・・だがそう言った瞬間、静かな怒りを灯した瞳に晒されガイはたまらず息を呑んだ。
「カノンは心から俺の為を思っていつも従事してくれる、それがどんなことでもだ。それを俺は固いとか感じたことは一度もない・・・けどなんだよお前は!?自分の考えばっかり優先して、それでカノンに迷惑をかけることばっか言ってここに来た!それのどこが俺の為なんだよ!俺に仕えてくれてるカノンの事を悪く言うって!」
「・・・っ!」
・・・ルークとガイのカノンに対する想いの差ははっきりと、この声に現れていた。いかにルークはカノンを信頼し想っているのかを明かした上でそんな相手を悪く言ったガイを指を指して責め立て、当の本人はショックを受けたよう身を引く。
「・・・そんなお前に俺は身を預けたくなんかない。俺の気持ちもカノンの事も理解しようとしないヤツなんかにな・・・」
「え・・・お、おいルーク・・・どこに行くんだよ、そんな闇の中に・・・!」
その姿に失望の色を深め後ろを振り返りルークは歩いていく、いつの間にかその周辺のみを残し全てが闇に覆われた場の中に。そんな場の異常に気付けず自分から離れていくルークにガイは少しずつ速度を早め追いかけていくが、全くその身に追い付く事は出来ない・・・
「・・・ルーク・・・ルーク?・・・ルーク、待ってくれ・・・なんで、なんでだルーク・・・ルークーーーーーーッ・・・!」
・・・もう全速力で走っているのに、しかしそれでもゆっくり歩いているはずのルークを一切捕まえるどころか追いつく気配すらない。そんな不可思議な状況に対していながらもけして追い付かせても振り返ってもくれないルークに対して、自分から離れていくその姿をガイはただ信じられないとその名を叫びながら追いかけるばかりだった・・・















「・・・やはり俺では完璧にはいかんな」
・・・所は戻りファブレ邸の一室。自身の指先を見ながらカノンは独り言を呟く。ボーッと突っ立ってる・・・ガイの前で。
「幻朧魔皇拳と同じく精神支配の技ではあるが、やはり鳳凰の名を冠するだけあって一輝以外には扱えんか・・・まぁいい、即席の劣化版とは言え鳳凰幻魔拳は成功した。これでよしとしよう」
そしてカノンは今の現状を作った技・・・かつて自身を追い詰めた敵でありハーデスとの戦いでは強大な味方となった男、一輝の得意とする鳳凰幻魔拳の名を呟いた。











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