必然は偶然、偶然は必然 第七話

・・・そこからどうにか父親の面子を潰さないような反論を口にしようと言葉を探していたナタリアだったが、やはりどうあっても自身の行動からそれをクリア出来る言い訳を探せずガイが兵士を伴って城に連れ戻されるまでルークに何も返せず姿を消していった。
「・・・さ、ナタリアも戻った事だし行くか」
その光景を見送りルークの何の感慨も見せないアッサリとした声にジェイド以外の3人が微妙な顔を見せつつも、一同は廃工場に向かう天空客車に乗り込む・・・









・・・そして廃工場に入ったルーク達。周りをさりげなくウッドロウ達が囲みながらティア達と距離を空けるようルークとイオンが隣り合わせに歩く中で、イオンが口を静かに開く。
「どうすると思いますか、彼女?」
「また抜け出すだろ、まず間違いなく。今度はちゃんと叔父上に許可を取ってから行こうって考えるだろうけど、まず許可なんて叔父上は出さないから今度は叔父上に迷惑をかけないって思いながら、なんか置き手紙か伝言辺り残してくるんだろ。『私はお父様に迷惑をかけないよう王女としてではなく、一個人として行きます』なんてな。実際城を抜け出す行為自体が迷惑極まりない行動なんだけど、それを理解しちゃいないからまず来るだろ」
「まぁ以前は『ナタリア王女』が抜け出した事を市井で知っていたのはそういなかったようですが、今回はルークとの対話で少なからず人々には王の命に逆らった王女というのは広まったでしょうからね。これで王女が不在になったとしても、反対する意見は出にくくはなるでしょうね」
「まぁな」
その話題の中心はナタリアの行動についてで、その失態に対し二人は静かにティア達に気付かれないよう笑う。



・・・ルークも何も憂さ晴らしだけで意味なくあの場でナタリアを罵るような言葉を吐いた訳ではない。天空客車の前、それも民が住むような階層であんなことをすれば当然人の目につくのは当然という物でルークもそれは承知の上だ。

そこで、二人のやり取りを見ていた民達は思うだろう。『ナタリア王女は陛下の命令に逆らい、行動を起こした』と。これでルーク達も納得のいく言い訳を出来て付いていく事が出来たならまだ評価はそうは下がらなかっただろうが、何も言い返せず完膚なきまでに叩きのめされた現状で評価は上がるわけはない。民達の間でこの事は少なからず話題に上がり、人々は『高潔で聡明なナタリア王女』という像を抱きにくくなるのは確かだ。

そういった評価の低下があればこそナタリア降ろしをやれる段階を踏める・・・そうルークは考えていたからこそ、あの場でナタリアを罵るような言葉で言ったのだ。

・・・そして更にナタリアはその評価を自身で一層おとしめる事になる、ルークはそう確信している・・・



・・・そういった会話をそこそこに繰り広げていきながら、適度に迷ったフリをしつつ廃工場の仕掛けを解いていった。そして廃工場の出口付近でまた音素異常により異常に変化した巨大蜘蛛と対峙したわけだが、そこはウッドロウ達がジェイド達の手を借りるまでもなくアッサリと撃退して事なきを得た。
(・・・やっぱりつえぇな、皆。つーか俺も戦って手伝いたいとこだけど、こいつらの前じゃな・・・)
その戦闘で自分にも全く引けを取らない腕を持ち息の合った連携を改めて見て、自身がティア達の前では戦えない事にルークは頭をかきながら歯噛みする。
(まぁそれもアクゼリュスまで、だな。それから先は遠慮なくやる・・・!)
しかしあくまでこの状況はアクゼリュスまで、そうルークは自身で思い直し出口の方に視線を向ける。タルタロスで導師奪還を待ちわびる、神託の盾が外にいる出口に・・・







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