必然は偶然、偶然は必然 第七話

「そういうつもりじゃない、か。ならどういうつもりなんだ?王女である自分を派遣しない叔父上の判断が間違ってるから行動したっていうんなら、それはそれでお前は叔父上を裏切った事にもなるんだぞ」
「えっ・・・!?」
次はインゴベルトを引き合いに出すルークに、ナタリアの表情はまた驚きで固まる。
「お前と叔父上は親子・・・って関係性ではあるけど、公にはそこに王と王女って肩書きが加わるんだぜ。それで例えば親子二人だけの飯の場で親からこの食べ物食べろって言われても子供が食べたくないって言っても、別にそれは子供の好き嫌いって言うだけの事で話は終わるだろ?けどさっきお前と叔父上がいたのは謁見の間で、あの場ではハッキリと親と娘である以上に王と王女という立場があった・・・わかるか?あの時叔父上の判断を不服としたお前は俺を信用しないと言った以上に、国王陛下である父上の判断を覆した事になるんだぜ。お前は」
「なっ・・・!?」
今は『一応』まだ親子・・・そこをさりげに強調しつつもルークからインゴベルトを王として否定したと言われ、ナタリアの表情が驚きから戸惑い混じりの怒りに変わる。
「わ、私はそのようなつもりは・・・!」
「つもりはなくてもお前の行動の結果次第じゃ陛下の判断が間違っていたと公に示すんだよ・・・いいか?仮にお前が俺達と一緒に行ってお前のおかげで和平は盛大に成功したとして、お前はバチカルに帰ったなら叔父上に対してこうでも言うつもりだったんじゃないのか?『ホラ、やはり私が行ってこそでしたでしょう!』とでも」
「・・・っ!」
「その顔は図星か。まぁいいや、続けるけどそんな事を他の臣下の前で叔父上が言われてみろ。臣下の中にはこう考える人間がいてもおかしくないぞ、『陛下は衰えられた、もしくは王女殿下より劣っている』ってな」
「っ!」
ナタリアの動揺に更につけ入るよう畳み掛けるルークの声は確かな中身を伴っており、ナタリアは何も言えず顔をひきつらせながら後ずさる。
「これはお前が言った言わないに限らず成功した場合の可能性を言ってるけど、その場合はお前は確実に陛下の面目を大いに潰すことになるぞ。娘に誤っていると言われ、命令したことに背かれた結果で娘が手にしたのはより大きな成功・・・これは国としては成功でも、その裏では臣下の中で陛下の評価を下げる事に繋がるんだ・・・お前、そこら辺の事を考えなかったのか?」
「・・・っ・・・っ!」
「・・・考えてなかったようだな」



・・・反乱を起こされた上にそれで大きな成果を上げられれば、当然反乱をされた大元に批難が及ぶのは必須。そのやり方を何故出来なかったのかと言われる形で。



ナタリアは自身が成功することを微塵も疑っていなかったようだが、そもそも他者を力づくで押し退ければその他者にはそれだけの被害が及ぶ物。そんな事さえも考えておらずルークから視線を反らしてしまうようでは器が知れる所の話ではない、端で見ているイオンにウッドロウ達の呆れが募るのも当然である。
「言っちゃなんだけど、お前の行動は今言った例えの食べたくない物を前にしたガキ以下の行動だぜ?親に従いたくないから否定して、勝手に行動して親の評判下げて・・・それをやってんのがただのガキじゃなくて、王女だっつーんだからな。それを理解してないんだから、余計にタチがわりーよ」
「・・・」
更にナタリアを攻め立てる言葉を吐くルークに、ナタリアはもう反論する気も皆無のようで下を見て俯くばかり。これで勢いを削いでいなかったらまだ一悶着はあったろうが勢いに乗れなければ人は立て直しにくい物、一気に押し込まれた結果ナタリアは反論の余地を見つけられない精神状態になってしまっていた。
(まぁこれでナタリアもしばらくは黙るだろ・・・あくまでもしばらくは、だけどな)
その状態を見てルークはしばらくと強調しつつもこれで弱味につけこまれずに先を行けると確信し、早く兵士を呼んでこいとナタリアから視線を外しガイの連れてくる兵士を待つために視線をキョロキョロと動かす・・・










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