必然は偶然、偶然は必然 第七話

「ほ、本気ですかぁ・・・イオン様ぁ・・・?」
「本気でなければそのようなことは言いません」
そんなイオンに正気を疑うかのような声を上げるアニスに、きっぱりそうだと言い切る。
「今の現状でバチカルに留まっていればルークの言ったように神託の盾が僕に襲い掛かって来るのが問題ですが、その上で更に僕の居場所が神託の盾に明らかになっていることも問題です。だから僕は神託の盾から姿をしばらく眩ませる為、密かにバチカルを出た方がいいと考えました」
「で、でもイオン様ぁ・・・モース様にはどう説明するんですかぁ・・・?」
「それは言葉のまま貴女が報告してきてください。彼も僕がこのバチカルでさらわれたなどという事態は避けたいでしょうから、その辺りの処理はしてくれるでしょう・・・ですのでアニス、すぐモースに報告をお願いします。僕はしばらく下で貴女を待っていますので」
「は、はい・・・わかりましたぁ、すぐに行ってきます!」



・・・モースからしてみればイオンはバチカルに辿り着く前に食い止めたかったが、こうやって和平の仲介で来てしまった以上もうイオンをさらう理由はない。むしろ神託の盾との関わりがあるなどと見せない為、イオンが無事にいてもらわなければならないという姿勢を見せる必要がある。



そんなモースの打算的な考えを読んでそれを含ませたイオンの命令にアニスは戸惑いながらも了承し、上へ向かう天空客車へ走り出す。
「・・・なぁイオン、お前なんかすぐにバチカル出るみたいに言ってるけど船は神託の盾が海上を封鎖してるからしばらくは出せねーんだぞ。どうやって帰るつもりだ、お前?」
「・・・そうなんですよね。船は使えない、かといって陸路を行くにしてもバチカルの入口の前にシンクが陣取ってますし・・・」
「はっ!?シンクが見張ってるっつーのかよ、バチカルの入口を!?」
「えぇ、あくまで遠目で確認したものですが間違いなく・・・恐らく僕を捕まえようとしての事だと思います・・・」
「マジかよ・・・つーかそれだとバチカル出て兵士が見えなくなった瞬間襲われる可能性あんぞ・・・」
その後ろ姿を見届けた後ルークは自然とイオンが一緒に行く流れを作るよう海上封鎖を口にし、それに対してイオンもバチカルの入口が見張られている事を深刻な様子で口にする・・・これら一連の流れは全く打ち合わせなどしていない、ただ互いが互いに一緒に行けるよう話の流れを合わせて持っていっただけのことだ。現にティア達は既にイオンが一緒に行くことを当然とする顔をしている・・・まぁこれがルークを連れていくかどうかと言う問題になればティア達はどんな正論を叩いても、確実に渋るのは目に見えている。あくまでイオンだから使えている手段だと言うのは二人ともに理解している。
「・・・待てよ・・・いい方法がある。アニスが来たら旧市街にある工場跡に行こう、天空客車で行けるはずだ」
「工場跡?わかった、とりあえず下に行くぞ」
するとガイが解決案を思い付いたかのように口にして、ルークは特に何も言わず下でアニスを待ってから行くよう先を歩き出す。
(・・・ま、今の時点じゃガイの案に従わねーとバチカル出れねーしな。まぁその気になりゃ正面から出て、バチカル離れたら襲ってくる神託の盾をハメるようにキムラスカ兵士をバチカルから援護に来させる事も出来んだけどな・・・まぁんなことしたってアクゼリュスの人達苦しむだけだからやらないんだけどな)
そうやって先を行く中でルークは神託の盾をハメる為の手立てを内心考えつつも、それはアクゼリュスの人の為にならないと別にいいかと流していた。



・・・いかに神託の盾が無法を行うとは言えバチカルの民や兵士がいる前でルーク達を襲うにはあまりにリスクが高い。故に襲い掛かるならバチカルから程よく離れた場所でやるだろうから、タイミングさえ計れば神託の盾を世界的な悪者に出来て、尚且つ六神将もその場で討ち滅ぼせただろうという予測はルークにはあった。



・・・そんな物騒だが確かにやれたことを頭の片隅に置きつつ、ルーク達は下の階層に行きアニスと合流した。






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