必然は偶然、偶然は必然 第一話

『・・・という訳だ』
『・・・成程』
そして全てを話し終え、ウッドロウは重々しく頷く声を上げる。
『不躾な頼みであることは重々承知している。そして天命を全うしたそなたは本来ならもう眠りにつかねばならんということも・・・だがそれでもそなたの手腕を見込んで頼む、オールドラントを変えてほしいのだ。ルークとイオンとともに』
『・・・確かに由々しき事態だということは貴方の話から理解出来た、人手が必要だということもね。だが今の私は貴方が言ったように、先程死んだばかりの死人で歳も取っている。そんな生き返らせたとしてもすぐ死ぬような老人に、貴方は手助けを願うというのか?』
『それについては問題ない。そなたの肉体はそなたが英雄と呼ばれていた頃の肉体を我が呼び戻す。必要な物についてなら、我が出来る限りの物は用意する・・・だから頼む、オールドラントに来てくれるかどうか、その答えを聞かせて欲しい・・・』
『・・・』
精一杯の下手に出るローレライの声に、ウッドロウは考えるよう少し黙ると声を出す。
『・・・一つ聞かせていただきたい。貴方は今のオールドラントという世界の状況を憂い、行動を起こしたのですか?』
『・・・あぁ、そうだ』
ウッドロウの問い掛けに、ローレライは苦々しそうに答える。
『預言は本来、星の記憶を詠んだ物・・・それには滅びがあった。そしてその滅びはどうあがこうとも、変えられないはずの物であった・・・だがそれをルークは変えてくれた。そしてルークにイオンの二人と音譜帯で過ごす内に、我もこれで滅びよりオールドラントは救われるのだと嬉しく感じていた・・・だがその考えはルークが後を頼んだはずの、あの者達のせいで覆されてしまった・・・』
『・・・貴方の言う、至らぬ治世のせいでですか』
『そうだ・・・本来なら世界の行く末は人の手に委ねねばならん、例えその世が滅びようと栄えようとな。だが今の我にはそのように割り切る事は出来んのだ・・・!』
『・・・』
身を切られるかのよう、痛々しい声は確かにウッドロウの耳に届く。
『数多の犠牲が出た上で平和であったなら、まだ我もいかようにしようとも思わなかったであろう。だが今の世は平和どころか、戦争すら起きかねん。それも預言も関係なく、人類が滅びるかどうかの規模と言える程だ・・・そんな状況に陥らせる奴らを、我は許せなかった。このような者達の為にルーク達は自ら犠牲になり、世界を衰退させたあの者達を・・・!』
『・・・二人と共にいる内に貴方はそう思うようになったのですね』
『ああ・・・だから我はそなたに頼みたいのだ、今のような世界を変革させる道筋を作る為のルーク達の手助けをな』
ありったけの想いを静かな口調に込めたローレライの言葉に、ウッドロウはそんな情を持つようになったのだと理解する。



・・・三十年。地核に二千年近くいたローレライにとって、さして長いとは言えない時間。だがユリア以外の人と長らく接していなかったローレライにとって、その三十年は二人に対しての情を覚える時間としては十分過ぎた物だった。



『・・・貴方の考えはよくわかりました。確かにルークとイオンという二人に対して同情の余地があることも十分な動機となりますが、それ以上に私は世界が滅亡するかどうかの未曾有の危機にあるという話を聞きより一層捨て置けない問題と感じました・・・私でよろしいというのであれば、協力しましょう』
『っ真か!?』
そんな想いはウッドロウに通じた。ウッドロウは丁寧に口上を述べるように協力を告げ、ローレライはたまらず声を上擦らせる。
『このままオールドラントを見捨て永久の眠りについても、夢見が悪そうなのでね。老兵の身の上で構わないなら、謹んで協力しよう』
『そんなことはない、その申し出を非常にありがたく思う・・・!』
そんな確認にウッドロウの言葉はキザな言い回しこそあるものの、真にオールドラントを救わんとする気遣いに満ちている。その言葉に、ローレライは真摯に声を出して礼を述べた。実に心強い協力者への失礼のない想いを込め・・・









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