必然は偶然、偶然は必然 第七話

・・・そして謁見の間に入り、インゴベルトの前に立ったルーク。だが言われる事などアクゼリュス行きへの作られた大義名分を言う為だと分かりきっている為、適当にルークは話を聞き流しながら立っていた。



「・・・お父様、やはり私も使者として一緒に・・・」
「それはならぬと昨晩も申したはず!」
クラトス達も同行させることを追加させられたのを確認しつつ、そうこうしている内にナタリアがインゴベルトに自分も行くべきだと大半が自分も行きたいという欲求に満ちた声を上げるが、すぐさま却下される。
「・・・では伯父上、出立の準備を整えて来ます」
「うむ、他の同行者は城の前に待たせておこう。用意が出来たらすぐに出立しなさい」
「はい、失礼します」
そこからルークはナタリアに同行の隙を与えないようヴァンに会うことすら暗に拒否するようファブレ邸に戻ると言い、インゴベルトがその許可を出すとルークは一礼をして退出する。









・・・そして部屋に戻って用意と言った物の別に何もすることがなかったルークはそうしたかのよう、ほんの少しゆったりと時間を過ごす。
「さて、行くか」
‘トントン’
「入るぞ、ルーク」
「っ・・・はい、どうぞ・・・」
そろそろ頃合いかと思い部屋を出ようとした時、不意にノックとともにかかってきた声にルークは悪態をつきそうになるのをこらえ声の主を招き入れる。
「調子はどうだ、ルーク?」
「大丈夫です、師匠」
その声の主はヴァン。今となっては胡散臭い笑みを浮かべながら入室してきたその姿にルークは普通に対応する。
「でもどうしたんですか、師匠?早くアクゼリュスに出発しなくちゃいけないんじゃないんですか?」
「・・・いや、アクゼリュスに行く前にお前に話をしておかなくてはならない。これは重要な話だ」
(わかってるよ、俺を操り人形にするためのだろ)
しかしわざわざここまで来た理由などとっくに検討のついているルークは先を急がないとと言うが、重い空気で話を切り出すヴァンに盛大に心で毒づく。結局俺を自分の言うことを聞かせるためだけに改めてここに来たんだろう、と・・・









・・・ルークのその考えは的中した。船の中でルークの心を揺らせなかった分の大分熱の入ったその言葉を聞かされていく度、使える機会は逃したくはなかったのだというのが伺える。
(うぜぇ)
そんな自身を案じているかのような様子で語るヴァンをルークは心の中、ただ一言で切って捨てる。
(まぁ場所的に考えてナタリアが盗み聞きなんてことがないだけまだいいか、流石に勝手にここまで来るなんてできるはずないし)
しかしこのファブレ邸というナタリアでも簡単に入ってこれない場所でやってくれる分にはまだマシかと感じていた。もし連れて行くよう説得しに来たとしても許可なしではファブレ邸にはそうそう王族でも入れない。ましてや王であるインゴベルトの命に背くようなナタリアの行動を白光騎士団の人間がそう易々と認めることはないだろう。彼らには以前ヘタをうったという前歴があるのだからそういった物には敏感になっているのだから。
「・・・自身を持て、ルーク。今からアクゼリュスに行くのはお前の未来の為だ、他ならぬお前だけの為のお前自身の未来のな」
「はい」
・・・そんな風にナタリア対策は自然になっていることを確認している最中にヴァンがいい笑顔で肩を掴んで希望を持たせる言葉を送ってきて、ルークは真面目な顔で頷く。
(俺の未来の為だっつったよな?だったらちゃんと俺の為の未来を掴んでやるよ。その未来にお前がいないのは確定事項だけどな)
その顔の裏でルークは確かに弟子として従うと宣言した、その言葉通り師匠がいない未来を掴む為に・・・










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