必然は偶然、偶然は必然 第六話

「・・・話は変わるが、明日にアクゼリュスにルークが出発する時はファブレ公爵からの依頼で私達も同行することになった。それで導師はどうやってこちらに合流するつもりだ?」
「あぁ、そうなったんですねやはり・・・そうですね。神託の盾も漆黒の翼もせいぜい来れて今日か明日の朝くらいでしょうし、かといってわざわざ彼らに捕まる気もありませんし・・・」
クラトスはあえてそれ以上アニス達の話をしまいと話題転換すると、イオンは考え込むよう手を頬に添える。
「・・・まぁ折りを見て皆さんに合流します。どうせ神託の盾が海上を封鎖するのは目に見えていますし、僕も歩いてケセドニアに向かうと言えば反論はされないかと思われます。ただアニスは急ぐ必要ないなどと言いそうですが、ここに残ったとしても僕だけで神託の盾の相手は流石に無理がありますからそこは丸め込んで見せます」
「・・・そうか、ならいい」
そして考えがまとまったいい笑顔からの言葉に、クラトスは中身に納得する・・・ここでバチカルに残れば例え漆黒の翼を退けたとしても神託の盾が更なる手を使ってくるのは想像がつく、そうなればイオンがいくら戦闘が出来るようになったとは言えキツいものがある(尚アニスを戦闘要員に数えていないのはイオンにとってもクラトスにとっても当然の事)。故に無理にでもルーク達と共に行くことが安全に繋がる、そうクラトスは思っていた。
「ですのでウッドロウさん達にもそう伝えてください、自然に入り込みますので」
「あぁ、それは伝えておくが・・・もうアニスの所に戻るのか?」
「いえ、ちょっと一人の内にやっておきたいことがありますのでこの辺りで失礼しようかと思いまして」
だがここでもう話を終わらせる流れになった事にクラトスは帰るのかと聞くが、イオンは少し違うと否定する。
「ここまで来ればもう十分にティアにアニスを含めた神託の盾の不始末をトリトハイム達に報告すれば除籍処分には出来ると思いましてね。すんなりとはいかないと思いますが、種まきは時期を見てやらなければ芽すら出ませんからね。アニスがいない内で樽豚に見られない内に導師として仕事をしたいので、適当な場所を借りて手紙を書いて飛ばすんですよ」
「成程、よくわかった・・・また明日会おう」
「えぇ、また明日」
その訳を詳細に例え付きで説明するイオンにクラトスはまた納得をするとすんなりと束の間の別れの挨拶を告げ、クラトスは下の宿にいるであろうウッドロウ達の元に笑顔の見送り付きで向かう。



・・・イオンが何気無く自然に言ったこと、それはモースを差し置いて自身でローレライ教団の膿の粛清をすることに他ならない。そしてそれを為す時期が今なのはモースがダアトにいないからである。

モースがダアトにいたならイオンが報告書を送ったとしても、中身にある人物達の処分は確実に拒否するだろう。例えイオンに詰め寄られたとしてもそらとぼけた様子を見せながら罪はないと言うのは明白だ、自分の手駒を失いたくないという上に立つ者としてはあまりに利己的過ぎて自己中心的過ぎる考えで。

・・・しかし今なら少なくともダアトにいるトリトハイムを始めとした上層部陣にモースのフィルターを通さない、イオンの生の声を通す事が出来る。そうやっておけば詠師陣には少なからず植え付けられる事だろう、ヴァンを始めとした神託の盾の不祥事の数々を・・・



・・・モースからしてみればイオンの反抗など、夢にも見ていないだろう。だが水面下で着実にイオンはその狼煙を上げているのだ、ダアトの粛清の為の狼煙を・・・その為にイオンは種火を作ろうと城へと歩き出す、不敵な笑みを浮かべながら・・・








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