必然は偶然、偶然は必然 第六話

・・・その後、ファブレ邸に入り公爵に会ったクラトス。傭兵として身分を偽ったこともある上、ユグドラシルとの対話でへりくだった話し方も熟知しているクラトスは上手に話を進めていった。

報酬面に関してはエンゲーブからバチカルまでの護衛報酬は先払いでなかったこともあり多少報酬を割り増ししてもらい、その上ではっきりと明言はされなかったものの近い内に大きな仕事を頼むと言われ、クラトスはならばとエンゲーブからの報酬がこちらで後払いだったこともあり、半分は先払いしてくれと公爵に頼んだ。

基本物を買うのは先払いが原則、その上ルークはアクゼリュスまでは無事に生かさなければならない・・・そういった負い目と考えがあったため、ファブレ公爵は多少言い淀みはあったもののクラトスに30万ガルドを渡す事を決めた。



「・・・父上、ただいま戻りました」
すると報酬をもらい終わった所でルークがガイだけ引き連れ入って来て、帰宅の挨拶をする。
「ルークか・・・」
「ご心配をおかけしました」
「うむ・・・」
うやうやしく挨拶するルークに公爵は威厳を持って返す。
「・・・ちょうど話も終わった所だ、私は今から登城する。ルーク、ナタリア殿下が来られている。失礼のないように接しなさい」
「はい、わかりました」
その空気のまま公爵は大して話しかける事もないまま、ルークはその姿を見送る。
「・・・では私も失礼しましょう、報酬ももらい終えたので用もなくこのような場にいるべきではないのでこの辺りで」
「あぁ、そうか。んじゃな、助かったぜここまで」
そこに続くようクラトスがさっさと自分もここから出ようと丁寧に切り出し、ルークは別に引き留めるでもなく手を振りクラトスを見送る。






・・・そしてクラトスがファブレ邸を出て、噴水付近にてある姿を見つける。
「・・・導師」
「あぁ、クラトスさん。お待ちしていました」
そこにいたのはイオンで、声をかけたクラトスに笑顔で対する。
「一人か?」
「えぇ、アニスにジェイドは少しここでゆっくりしたいと言ったら二人とも離れていきました。ふふ、馬鹿ですよね。いくらここがバチカルの上層部だからと言って護衛対象を放っておいていいはずがないのに」
「・・・確か話を聞けば前はファブレ邸に当然と言わんばかりに入って来たと言っていたが、何故今回は入って来なかったんだ?」
「あぁ、それは僕が丁寧にやめろと言ったからですよ・・・ちょっと手間取りましたけどね」
そんなイオンにクラトスは色々と質問をするが、終止笑顔でいるのに確実に裏は不機嫌そのもの。そうクラトスは感じ取っていた。
「普通に流れのままファブレ邸の中にアニスもジェイドも入ろうとするのはわかっていたので、言ったんですよ僕は。長い旅路でルークも疲れているだろうから僕達は僕達でゆっくりしようって。でもガイが言ったんですよこう・・・いいよ、別に少しくらいならもてなすからさってね」
「・・・何を言っているんだあの男は、あの家はどう考えてもあの男の物ではないだろう・・・」
流れを話すイオンにクラトスは珍しく心底から呆れた声を出す。いくら主の息子と気安い間柄を築いている(と本人が思っているだけでルークからすれば今は全くの事実無根のこと)とは言え主の意向をすっぱり見ないまま話を進めるなどあってはならない、その程度の気遣いすらないまま勝手に話をしたのかという想いがクラトスの印象低下に尚の拍車をかけていた。
「だからまぁ僕があえてそれを固辞したから二人もファブレ邸の中に入らなかったんですよ。ただアニスはルークが屋敷に入るまでやたらごねてましたし、僕が一人になりたいと言ったらそれはすぐさまわかりましたですからね・・・職務怠慢として、追加ポイントですね」
「・・・それが妥当だろう」
更にイオンからまっすぐな不満がぶちまけられ、クラトスも本音から妥当だと言う・・・こんな風に常識を知らない人物に対して、疲れを覚える物なのだと改めて考えつつ。











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