必然は偶然、偶然は必然 第六話

「イ、イオン様・・・何を・・・」
「ティア、忘れてはいませんよね?貴女がこのバチカルのファブレ邸において何をしたのかを?」
「っ・・・!」
たまらずティアが何をと言いかけるが、すかさず絶対零度の声で見下すような声をイオンが向けるとようやく思い出したようでティアはハッと顔を青くして下を向く。
「ゴールドバーグ将軍、ヴァンにその疑いがあるということはティアにもその疑いがあると見ているのですよね?」
「は、はい・・・実行犯という点で見るならこれ以上ない人物ですので、そちらも出来るなら是非お引き渡しをお願いしたいのですが・・・」
そこからゴールドバーグに視線をイオンは向けると、ゴールドバーグは凄まじい圧を感じたのか妙に動揺しながらティアの引き渡しを口にする。



・・・以前ティアに関して身柄引き渡しを願われなかった理由については、2つ考えられる。1つ目はティアの近くに確実に擁護に入ると思われていたイオンの存在があったから、2つ目はイオンから離れてもティアがいただろう場所は手駒の引き渡しを確実に渋って圧力をかけるモースの存在があったから・・・つまり、周りにティアをはからずも守る存在がいたからになる。だが今のイオンはそんなことはしないし、むしろさっさと消えろとすら思っている。



「構いません。いくら彼女に訳を聞いても導師である私にすら口をつぐみ話そうとしてくれませんので、ファブレ邸を襲った訳はじっくりとお聞きください」
「イオン様!それは、個人的な理由と・・・!」
「黙りなさいティア・・・ではゴールドバーグ将軍、二人をお連れしてください」
「はっ・・・では私は二人をお連れしますので失礼します・・・後はセシル少将が引き継ぎますので、少将になんなりとお命じください・・・では」
「セシル少将です。よろしくお願いいたします」
そんなゴールドバーグに対し一瞬の間もなく即答したイオンにティアは尚も言い訳にもならない言葉を盾にしようとするが、絶対零度の氷をまとった言葉の槍ですぐに盾を貫いて黙らせゴールドバーグに捕縛の許可を出す。ゴールドバーグは落ち着いているヴァンと憔悴して何も言えないティアを周りにいる兵士達に捕縛するよう目で合図すると、セシル少将を紹介して礼を残し二人をすぐに捕縛した兵士達と共に場を離れていく。そして場に残ったのは丁寧にちゃんとした軍人として頭を下げるセシル少将と幾人かの兵士達。
「ではセシル少将、場も落ち着きを見せたので改めて自己紹介しましょう。ローレライ教団導師イオンです。マルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下に請われ親書をお持ちいたしました。国王インゴベルト六世陛下にお取り次ぎ願えますか?」
「無論です。ですがルーク様が帰国された事と自宅にルーク様をお送りしなければなりませんので、ファブレ邸に寄り少々時間を取りますがよろしいでしょうか?」
「あ、いや。ちょっと待ってくれ、セシル少将」
邪魔者がいなくなったことで本来の導師としての顔でイオンが要件を述べると、セシル少将は丁寧に答えながらもルークを自宅に送っていいのか確認を取ろうとするがルークがすかさず手を出し会話を止める。
「俺は導師にカーティス大佐と共に陛下の元に顔を出す、和平の仲介を二人から頼まれたからな。それに陛下と顔を合わせておきたいからな、家にはその後戻るからまだ寄らなくてもいい」
「そういうことでしたら・・・わかりました」
「それでついでと言っちゃなんだが誰か適当な兵士を付けてこの傭兵団にエンゲーブから俺を護衛してきた分の報酬を支払うよう、先に家に連れてってもらえないか?全員が無理なら代表のクラトスだけ入れればいいから」
「・・・公爵がどう答えるかはわかりませんが、そういう事情でしたら1人くらいは入れるでしょう。この兵士に今までの事も含め報酬の話を通すように言いますので、私に付いてきていただいてよろしいでしょうか?今から城までご案内致しますので・・・」
「あぁ」
家にはすぐ戻らない事とクラトス達への報酬の件、2つを通すようにルークから言われセシル少将は了承しながらも本来の役目の案内をすると言い出し、ルークも頷いて返す。










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