必然は偶然、偶然は必然 第六話

「・・・随分とご立派だよな、謡将殿。弟子であり公爵子息であるファブレの子の心配をして部屋に見舞いでも来るのが礼儀だろうに、そんな様子一切なかったぜ」
「アレからしてみれば別に大したことではないと思っているのでしょう、礼儀も貴方を自分以外に信用させないようにすることも・・・まぁどちらにせよ些細な事です、気にせずいきましょう。後でその報いはいくらでもむしりとって差し上げるんですからね」
「あぁ」
・・・これはケセドニアに着いた事で船から降りる前、ルークとイオンの間で交わされた会話である。









「ルークよ、体調は大丈夫か?」
「(白々しいにも程があるぞ、おいこら)・・・まだあんま気分はよくないです」
「(上部だけの師匠面はやめてください、いい加減殴りたくなります・・・素で)・・・初めての船だったのであまり慣れなかったのでしょう。とりあえずここにいる間はゆっくりと体調を整えられた方がいいですよ」
「あぁそうする・・・」
・・・そしてこれは船を降り出口付近でのヴァンも近付いた時の会話である。二人とも船の上で出した心の声を一切表で見せることなく、尚且つ二人のやり取りで他の面子に対してもルークが気分を悪くしているとアピール出来た。これで変に声をかけるような奴はいない・・・
「大丈夫ですかぁ、ルーク様ぁ~?」
・・・と思っていたらこれをチャンスと感じたのか、今港の出口で合流したアニスが空気を読まずブリブリの声でルークに近寄ってくきた(大分護衛対象を置き去りにして先に行ったなオイ、とルークとイオンの二人はその姿を見た時に同時に思った)。
「あんま話しかけんな、頭に響くんだよ・・・」
「ご、ごめんなさ~い・・・」
その姿に素でイラついたルークはイラつきか頭痛か判断しにくい顔で返し、アニスを一蹴する。
(・・・媚売りをするために病人の心配するフリなんざすんじゃねーよ、より不愉快にさせるだけってわかれよおい)
金の匂いに敏感なのは百歩譲っていいとしても、流石に露骨過ぎる上に相手に配慮のない行動はムカつく以外に言葉が出てこない。ルークはそれを声を大にして言いたかったが、後々の事を考えてやめておいた。









・・・そこから後は特に滞りを見せることなく事は進み、ルーク達はさっさとバチカル行きの船に乗ることが出来た・・・尚、その船にはカイツール軍港をアリエッタが襲撃していないこともありヴァンも同船している。



「ふぅ・・・アリエッタが軍港襲ってないからまさかとは思っちゃいたけど、普通なら同船する流れだよなこれ・・・」
「まぁこれが六神将の極力介入の少ないパターンでの行動の結果だからでしょ。その分早くバチカルに着く事になるでしょうし」
「・・・ただこのまま行けばおそらく以前のお前なら見たくはない場面を目撃することになるだろうな」
部屋に着きやはりティア達にヴァンのいない空間になったところでどっとくつろぐルークに、ハロルドが呟いた声に答えクラトスがそれから先の事を予想して紡ぐ。
「あぁ、確かセシル少将引き連れてブラウンパイナップルの収穫に行ったんだったな。あの時の父上」
「そうですね。ただ刈り入れ時期を間違ったからなのか誰かが細工をしたからなのか、あのブラウンパイナップルは世界にばらまかれたんですよね・・・毒入りパイナップルとして」
クラトスが何を言わんとしているのかを察したルークとイオンの二人はヴァンを多大にバカっぽく例えた話を入れつつ、バチカルでヴァンが囚われの身となる事を思い出す。
「まぁそれはそれでいいんですけどね、僕達の考えに沿うなら・・・」
しかし今から取るべき行動にそのヴァン捕縛という状況はむしろ望むところだと言わんばかりにイオン、そしてルークは悪どく笑む・・・










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