必然は偶然、偶然は必然 第五話

・・・イクティノスが一人昔の事を併せて思い出しつつも、その後話はウッドロウが結局結婚しなかったことの本題に触れさせる事なく終わらせた。ルーク達は壮大な話を聞き終えた満足感に似たものを感じていた為、誰もそこを突かずにいた。









・・・そしてその後イオン達が宿に戻って少しの間ゆっくりしていると、ルーク達の部屋にマルクト兵士が入ってきた。

そのマルクト兵士が言うには少し前にアニスが駐屯地に来たが囮の為に先にカイツールに一刻も早く行くよう言うと、不満げな様子を見せさっさと出ていったとのこと。そしてつい先程神託の盾がセントビナーに来て周りを取り囲むように兵士を配置してきたため、外に出ることは控えてほしいと言ってきた。



その報告にルーク達が頷くと兵士は室内から去っていく。
「・・・聞くと結構ギリギリなタイミングでアニスここ出たんだな」
「まぁいいんじゃないですか?前も逃げ切れてたようですし、大丈夫だと思いますよ。それに以前と違い旅券は渡したって兵士の方は言ってましたし、多分カイツールの港に直行してると思いますよ・・・まぁ普通に考えたら国境辺りで合流しようとするのが妥当な所だと思いますけどね」
「そうだな。本来対象から付かず離れずにいるのが護衛のはずだが、自身だけが先に進むのは愚の骨頂のはず・・・なのにそれを考慮しないまま、遠慮なく先に行く姿が容易に目に浮かぶな」
その姿が消えてからルークは素直な感想を口にし、イオンは大分皮肉混じりにアニスの取るだろう行動を口にしてクラトスもその声に同意しつつ目を閉じる。



・・・以前アニスはタルタロスで離れ離れになった後、セントビナーにカイツールと1人どんどんと先に進んでいった。それは敵の追撃を避ける為の逃亡でもあったのだろうが、そもそもを考えてみるとおかしいと言わざるを得ないのだ。

まず第一に言えばマルクトの名代であるジェイドと和平の仲介を頼まれた教団トップのイオンを置き去りにし、一人逃げ出した事。これはあくまでも最終的には親書だけでも守る為の行動ではあろうが、それはあくまでもジェイドの指示に基づいた行動。つまりは導師の命運を自身の手からこぼし落として天命に任せたのだ、命を賭けて守らなければいけない対象を。これが神託の盾がイオンの命を目的としていたならもう終わりだということを考えていなかったのなら、もう護衛失格どころの次元の話ではない。

それらを踏まえ第二にマルクトからキムラスカに和平に向かおうと言うのに、自身一人親書だけを持って先に行って何をしようと言うのかということだ。アニス側はジェイド達を信じていたから先に行ったと言う端から聞けば美談な事を言うのだろうが、もしジェイドもイオンも死んでいたらアニスはどうしていたというのか?

その上で三つ目に上げるのはそうなっていた場合もだが、そうなっていない場合でも先に行き過ぎてイオン達の行方が知れない状況に自ら飛び込むのはいかがな物かと言った問題があることだ。以前カイツールでアニスを見つけた時は旅券がなかったが故に足止めをくらいなんとか合流出来たが、旅券があった場合は国境を越えていたのはまず間違いない・・・最低でもここで合流しよう、そんなやり取りをジェイドとアニスはしていたことだろう・・・だが考えて欲しい、タルタロスが襲われた場所はマルクトの領土内の出来事だ。先に行けばキムラスカの情報は入っては来ても、マルクト内の情報はどんどんと遠ざかるから必然的に入って来にくくなる。つまりイオン達の消息についての情報も入りにくくなるのだ、主の消息が。そう言った事を踏まえれば先に先に進み続けるのではなく、国境というある程度自由に制限はあっても情報がまだ来やすい所でしばらくいた方がいいと言えるだろう。

・・・それらを総括して考えるとルーク達はアニスの取った行動は『考えなしの勢い任せ』、そうとしか思えなかった。








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