必然は偶然、偶然は必然 第五話

「まぁその事については出来れば神託の盾が私達がセントビナーに来ていないと考えるまでにカーティス大佐が帰ってこなかった場合でお願いします。それで1つお願いがあるのですが、私達の人数分の旅券を非公式の形で公式に発行したもののように用意していただけないでしょうか?」
「旅券を、ですか?」
その話し合いを見てイオンは後にしてくれと言いつつも旅券の事を口にし、グレン将軍が初めて聞いたかのように聞き返してくる。
「えぇ、カーティス大佐にお聞きしたら旅券を発行したら証拠が残ると言う事で旅券を持たずにここまで来たのですが、これから先の道程を考えると旅券がどうしても必要になります。ですから証拠が残らないよう、非公式に作った公式の旅券を譲っていただきたいのです」
「そうですか・・・では少し時間はかかりますが、数日の内には用意しましょう・・・おい。任務とあればそう言った配慮も陛下はされるだろうに、ジェイド坊やは何をやっておるのだ・・・」
「確かに・・・」
その様子にさりげに旅券がないのはジェイドのせいと踏まえつつイオンは旅券の作成を願い、老マクガヴァンがイオンには快く了承するがすぐさまグレン将軍に旅券の件について耳打ちする。
(やはり旅券を持たずに力ずくで行こうとした姿勢は二人からしても愚かだったみたいですね・・・)
その声が聞こえた事にイオンは内心でほくそ笑む、やはり裏で手を回しもせず旅券を持たずにグランコクマを出立したことは馬鹿な事だったのだと。



・・・この和平に向かうという国全体での一大行事に、国のトップである皇帝が協力しないことは有り得ない。それこそ皇帝が一言言えば特例で証拠が残らない旅券を作るくらいは出来るだろう、むしろ出来ないはずがない。



(今更ですがジェイドはどうやってカイツールを通り抜ける予定だったんですかね。あの時はブラウンパイナップルがいたからなんとかなりましたが・・・まぁいいでしょう、ウッドロウさん達の分の旅券は確保出来たし不毛な事は考えないようにしますか)
そこから旅券無しでどうするつもりだったかというジェイドの手腕について考えようとするが、もう1つの目的であるヴァンの持ってきた旅券分だけでは足りないだろう旅券を確保出来た事に満足し思考からそれをイオンは追い出す。考えてもせんなきことだと思いながら。












・・・そこから後の処理は自分達がやるから導師達はゆっくりして構わない、と言われルーク達は駐屯地から出て宿屋に向かった。



「・・・あ、お疲れ。どうだった?」
「まぁ上々ってとこだな。大体やれることは全部やっちゃ来たぜ・・・ただちょっと考えてみると、厄介な事があんだよな・・・」
「厄介な事って?」
宿の一室に入ったルーク達を出迎え挨拶をしたセネルにルークは軽く笑むが、すぐに顔をめんどくさそうに歪ませる。
「前って確か神託の盾が来た後か前かは覚えてないけど、とにかく前後した時間にアニスがセントビナーに来たんだよな。それで今は前と違ってアニスより先にセントビナーに来てて、ちょっとしたらまず間違いなくアニスが神託の盾と前後した形で来るからセントビナーで息を潜めながらアニスとしばらく過ごさなきゃなんねーんだよ・・・うぜぇんだよな、ファブレ公爵の子息だってことでアイツがずっとすりよってくると思うとさ・・・」
「あぁ、そういうことか・・・」
訳を聞かれルークは丁寧に順序だてて答えるが、アニスの事だと疲れた様子で言われセネルもつられて頭を抱える。









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