必然は偶然、偶然は必然 第四話

「何っ・・・!?それは、どういう意味で言っている・・・!?」
ウッドロウからのまさかの言葉に、リグレットは心底から理解出来ないと戸惑いながら理由を問う。
「何、そう難しい事ではない。我々もこのタルタロスから脱け出すに辺り神託の盾の追撃は受けたくないのでね、君を連れていけばそのような事は避けられると思っての事だよ」
「っ・・・体のいい人質か・・・!」
そのウッドロウから出てきたのは戦略的に見て1つの手段として有効な人質を用いての敵地からの撤退。かつてのウッドロウの仲間のスタン達からしてみればらしくない情は薄いが妥当な判断に、リグレットは立ち上がれぬままその意に気付き不快そうに顔を歪ませる。
「まぁ私達に自主的に付いていきたいというのであれば止めはしないが、君は簡単には心変わりはしないだろうからね。とりあえずは私が君を連れていかせてもらうよ」
「・・・なっ、何をする貴様!?」
そんな剣幕を別に気にするでもなくウッドロウは近付くとおもむろに倒れたその体を抱き上げ、リグレットは動揺をあらわにする。
「ルーク君、ここを脱出しようか!そろそろ彼らも撤退を始めていることだろう!このままここに居続けてはいずれ神託の盾も我々を取り囲み出すだろうからね!」
「あー、そうか!そういやそうだな・・・んじゃ名残惜しいけど、一先ずの決着はつけてやるよ!」
「・・・っ!」
そこからリグレットを抱き上げながらもウッドロウはルークに撤退することを通る声で促し、ルークもそれに納得しつつ一気にアッシュの懐に飛び込む。
「烈破掌!」
「ガハッ!」
‘ドゴッ!’
いきなり目の前に来たルークに反応しきれなかったアッシュは腹に烈破掌をぶちこまれ、壁にまで吹き飛ばされる。
「アッシュ!」
「心配すんな、気絶はしちゃいるだろうが死んじゃいねぇよ・・・多分な」
その光景を見てリグレットがアッシュの生死について必死な声を上げるが、ルークは至って楽しそうに振り向き死んでても別に構わないという声で返す。



(なんだ、なんなんだこいつらは・・・!?)
ここに来て、リグレットは得体の知れない恐怖をハッキリと感じていた。
初めはアッシュのレプリカが誰とも知らぬ人間とつるんでいる、そんな程度の認識しかなかった。片や人間以下の存在、片やそんな存在に与するどこの誰とも知れぬ馬の骨。そんな二人程度に初っぱなこそ出鼻を挫かれたものの、負けるなどとリグレットは毛頭思っていなかった。
だが現実は違った。六神将である自分達二人を相手にして1歩も退かないどころか、何か自分達とは別次元の所で自分達の襲撃に対してすら予測していたような余裕を持って戦っている節すらある・・・そんな様子すらあるとリグレットは感じていた。
(コイツらは何なんだ、一体・・・!?)
だからこそリグレットは何故ここまでルーク達が自分達を寄せ付けないような物を持っているのか、それが不可解でならなかったが故に恐怖もあったが興味もリグレットはあった。



「では行こうか、早めに彼らと合流出来ればそれに越した事はないからね」
「あぁ、行くか」
・・・真実はヴァン達の行動を知っているからこその、先を見た行動の上の事。そんなことはリグレットには露程も悟らせる事なく二人は早くタルタロスを出ようと言うと、その場からさっさと1人気を失ったアッシュを残して立ち去っていく・・・









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