混ざりし世界での暮らしと焔との交流

「まぁあの人の性格考えるとどっちがいいかって考えて、ルークの味方についた可能性が高いんじゃない?さりげに話をそっちの方に誘導したりして」
「ん~・・・今思うと有り得ない話じゃないかもしれないかもな。実際貴族達の要求がマシになったのってピオニー陛下が仲裁してくれたからってのが大きいし」
「そうなのか・・・でもなんでガイ達はここに来てないんだ?特にガイの事を考えると俺もって言うと思ったんだけど」
「あ~・・・それはな・・・」
『ハロルド』はそのピオニーがルークに寄った物ではないかと推測し、ルークも心当たりがあると頭をかく。『セネル』も感心の声を上げるのだがふと上がったガイ達の姿がないことへの疑問に、ルークは気まずげに頭をかきながら視線を背ける。
「・・・まぁアンジュとかにも言ってるから言うけど、ガイ達はもう俺とは関係無い配置につかされて働いてんだよ。つっても俺に直接の主従関係って意味で配置に付いてたのはガイだけだったから、厳密に言うとティア達は別にそう言った事にはなってないんだけどな」
「主従関係じゃないって、どうしてそんなことになったんだ?」
「一応俺付きとなっちゃいたけど、ガイには俺から給料をやってた訳じゃないしな。国が雇ってる訳だし。それで俺が国から出るって時にガイが俺もって言い出した時にそうするなら給金は出ないって言われたんだよ・・・こう言われるってことって事実上の解雇になるよな。だって国に仕えてるってのに給金が出ないってんだからな」
「そうなるだろうな。そしてそれでガイは苦悶の末、ライマに残ることを選んだと言うわけか」
「まぁあいつもなんだかんだで国に仕える身だからな。立場も何もかも捨ててってのは難しいだろうから、それは正しいって俺は思うからガイの事は責める気はないし」
それでガイ達がここに来ないわけを経緯付きで話すルークの声には言葉通り、負の感情はこもっていない。むしろ納得と言った様子だ。
「・・・ただそう言った事になりはしたけど、ガイ達からの手紙に来訪がキツいんだよな・・・ライマに戻るように陛下やアッシュに頭を下げろ、自分が取り成すからって似たような事ばっかり言う形でな」
「あぁ~、自分からルークの方には付いていけないからあんたの気持ちの方を変えようとしたのね。そう言った形なら別に自分の責任にはならないし」
「ちょっと待ってくれ・・・一つ聞きたいんだけど、そもそもどうしてアドリビトムにルークは来ることにしたんだ?アンジュは事情はどうあれ働かない奴はここには置かないって言うの分かってたはずだろ?」
「それは条件を出されてライマから出はしたけど、居場所が分からないのは止めてくれって言われたのもあるからだよ。何だかんだ言いはしても一応王位継承権は残ったままだから、そんな存在が行方不明になんのを避けたかったんだろうしな。んで俺的には国を出ても行くところがなかったからアドリビトムに身を寄せようって決めたんだ。別にやることもなかったし、働く事に昔のように嫌だって言うような気持ちもなかったしな」
「成程・・・だがそれでガイ達も居場所を知ることとなり、勝手知ったるアドリビトムだからと来訪までしているというわけか」
「そう言うこと。つっても首を縦に振ったことは一回もないけどな、俺」
しかしとまだガイ達が諦めてないことを明かすと共に、『セネル』から問われたアドリビトムにいる訳を答えるルークの顔には清々しさがあった。何も自分を縛り付ける呪縛は存在しないと言わんばかりに。
「どうせ頭を下げて戻るなんて言ったってガイ達の身分を考えるとちゃんと戻れるかどうかも怪しいし、そもそも戻ったって地位にこだわってる訳じゃないけど俺が正当王位継承権を持ち直せるなんてまずないと思うしな。それにナタリアはともかくとしても大多数の貴族達にアッシュは今更帰ってくんなって態度を取るのは簡単に予想がつく。アッシュに至っちゃ人の前で堂々と屑呼ばわりなんてのは確実だ・・・んな環境に戻ったって俺が辛いのもあるし、周りも一々対応すんのも面倒いだろ。だから俺は余程じゃないと帰らないって決めてんだよ。それに今の方が昔よっか生きてるってか、充実してるって感じてるから余計にな」
「そうか・・・」
・・・そしてその呪縛は何なのか、と言うのを言葉にこそしないがルーク自身よく理解していて三人も理解した・・・仲間というにはあまりにも歪で、それもルークにとってだけ茨のように絡み付く結び付きをもたらすガイ達の事である。



それら全てを断ち切り独り立ちをすることを望み今ここに存在するルークの笑顔に、三人とも安堵の笑みを心から浮かべた・・・これならルークは大丈夫だと思い。






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