必然は偶然、偶然は必然

『でもさー、ローレライ』
二人の意志を確認したところで、そろそろ過去に二人を送り出そうと思っていたローレライにルークからの疑問の声が上がる。
『どうした?ルークよ』
『俺らが過去に戻るのはいいんだけど、俺らって政治の仕組みとかってあんまりわかんねぇんだけど』
『あぁ、そういえば僕もあまり自信が・・・』
『・・・むぅ』
二人の言葉にローレライは考え込むように唸り声をあげる。



・・・彼ら二人はあの旅の時点では実年齢七歳と二歳、はっきり言えば政治の事を知り得ているはずもない。音譜帯に来てから二人も下界を覗くことで知識は身につけて来たが、政治に関しては世界が混乱していたために平安に保たれている国をまとめるためのまともなやり方の政治の手本というものを二人は知らなかった。



『伯父上とかピオニー陛下のようにすればいいって言うんならそうするけど』
『ただ、やはりあまり大量のレプリカ達が産まれた状態では終わらせたくないですね。でもそれなら真っ当な政治のやり方は僕らには絶対に必要なことです』
更に二人の言葉がローレライの悩みになる。以前の流れを組んでしまえば、必然的にヴァン達の手により大量のレプリカ達を産んでしまう事になる。そうなれば世界の混乱と共にレプリカの迫害の現実が出て来る。ただ、それらを起こさないように意識した歴史改革を行えばこの現状とは違う未来が待っている。そうなれば政治に関わりが少ない二人にうまくやっていけるかどうかという不安が言葉に現れていた。



二人の言葉に沈黙したままのローレライ、それにつられて二人も考え込む。その時間がしばらく続くと、沈黙に包まれていたローレライからようやく言葉がでてきた。
『・・・うむ、仕方ない。我が別の世界まで行き、政治を行えるものを連れてこよう』
『・・・は?』
『・・・ローレライ、冗談ですよね?』
過去に送るといったときのように、また怪訝な顔になる二人。だが、ワンクッション置いている分二人の動揺は少ない。
『冗談ではない、我は本気だ』
『・・・お前がいうからホントなんだろうけど、そんな事相手は受け入れてくれんのか?』
『心配するな、我が説得する・・・こうやっていても仕方ない、そなたらを過去に戻すぞ』
『『えっ!ローレライ!?』』
『そなたらは始まりの時の一月程前に戻す。始まりの時が来たら我は二人が出会う地で政治を行えるものを寄越す。それでは行くがよい』
『ちょっ、ちょっとまっ・・・!!』
まだ何かいいたげなルークの言葉を遮り、ローレライは二人を自らの光りで包み込む。その光が収縮して消え去ると、二人の姿はすでになくなっていた。



『さて・・・我も行くか』
その一言の後、未だ混乱の極みにたっている地上をちらりと見てローレライは異次元の扉を開きその空間へと消え去っていった。









「ん・・・ううん・・・眠い・・・」
ルークは寝返りをうちながら自分に訪れている眠気に甘い誘惑を感じていた。
「ん・・・あぁ、久しぶりだな。眠る感覚ってのも・・・」
すると途中でルークはパッと体を起こして辺りを見渡す。自分が音譜帯にいた時にはなかった感覚、自分に生きていた時にあった感覚を思い出したルークは自分が戻ってきたことを確信した。
「・・・確認するまでもないけど、俺の部屋か」
一月程前と言っていたからにはそうだろうな、そうルークは思いながらふわぁと眠そうにあくびをする。
「・・・寝よう、久しぶりに睡眠をとってから色々やろう」
今の自分にある確かに生きているという実感、眠気を無視してまで何かしても意味はない。ルークはそう思い、また体をベッドに預けた。






「ここは・・・僕が使っていた部屋ですね」
その頃、イオンも自分が使っていた部屋の中で過去に戻ってきたことを確認していた。
「一月程前とローレライは言っていましたね、ならそろそろマルクトから使者がくるころですか・・・」
さてどうしましょうか、これからの行動をどうするかをイオンは何やら若干黒そうな笑みを浮かべて熟考を開始した。



後はローレライを待つだけ、二人はそう思っていた。しかし事態は複数の曲面を迎えることになる。




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