父という立場

「私の見立てでは公爵、状況は違えど貴方は私と似たような立場にいらっしゃいます」
「・・・私が、か?」
「はい・・・少々不躾な事を申しますが、私は父親としての責務を果たせずにいました。例えどうしようもない状況だったからとはいえです。そして公爵も預言という物の為にルーク様と向き合うという父親としての責務を放棄してしまった」
「っ!?・・・・・・それは・・・認めたくないことだが、事実・・・だな・・・私はルークと向き合う事を放棄していた・・・ルークは預言により死ぬのだから、記憶を失ったのだからと・・・自分の立場を重んじようと、目を逸らしている事実に目を逸らす形で・・・」
自分と公爵は似ている。そうらしくない形で漏らすクラトスに公爵はイマイチ理解出来ず首を傾げたが、言葉を選ばず告げられた直球の言葉に衝撃を受けてよろよろとしながらその言葉を肯定した・・・おそらく普段だったなら無礼極まりない言葉に怒りをぶつけていただろうが、公爵は立場という物を精神的に脱ぎ捨ててクラトスと対している。それ故に自分の弱さと対する事は避けられなかったのだろう。いかに不躾と言われてもそれが同じように自身の心をさらけ出しているクラトスからの言葉だけに、より受け入れざるを得ない状態になったが為に。
「お認めいただけるのなら話が早い・・・公爵からして見れば自分の理解の範疇を越え、予想だにしない子息の成長を見せつけられた事でその不安とも呼べる気持ちが浮かんできたのでしょう。今までにそうしてこなかったからこそ・・・」
「・・・だから、か?お前のようにルークと向き合え、と言うのか?」
「はい・・・私とロイドの関係と公爵と子息の関係では接し方も話すべき内容も違うでしょうが、ここで向き合う事を避けると選んだなら公爵は後悔をして自身の子息から目を逸らしながら接する以外に出来なくなるかと思われます。事実私もロイドと親子であるという事実が明らかにならないままの状態だったならと考えると、今となっては恐ろしくも思うのです・・・和解をせずロイドと離れていたら、どれだけ心残りを残していたのかと・・・」
「っ・・・そうか、確か今ルーク達といる中にお前の息子らしい者はいなかったな・・・傭兵という立場にいるのであれば、それも当然か・・・関係無い者を供に加えぬのは・・・」
その公爵にクラトスは真剣に向かい合うように話を続けると、公爵は重く言葉を受け止めると共に勘違いをする。まぁクラトスの言い方から考えれば世界を越えたからというのではなく、傭兵という仕事の都合上と取った方が自然と言えるだろう。
「・・・分かった、お前の言う通りルークと向き合おう・・・話を聞いて身に積まされた。息子と向き合わなければこれから後悔をしてしまうのだろうということをな」
「そうですか・・・そう決断していただいたなら幸いです。私も自身の身の上話をした甲斐があります」
「むしろそこまで言わせてしまって聞かなかった事には出来んだろう・・・私も決意が固まった。お前のおかげだ、礼を言う」
「礼には及びません、頭をお上げください」
そしてそこまで聞き公爵は決意を固めて頷いた、ルークと向き合うと。クラトスはその決断に微笑を浮かべると公爵は深々と頭を下げ、その姿にすぐ頭を上げるように言う。












・・・その後、少し会話を交わした後にクラトスはその部屋を出た。そして以降は公爵から特に何かを言われることなく、ルーク達の手助けを終えたということでクラトスはセネル達と共にオールドラントを離れた。



・・・本来ならそこでオールドラントとは二度と関わることなく終わっていただろうとクラトスは思っていた。だがハロルドによりセネルと一緒に無理矢理世界を巡る旅に連れていかれたクラトスは再びオールドラントに来ることになり、バチカルのファブレ邸に赴いた。






「・・・むっ・・・」
「父上、お帰りでしょうか?」
「あぁ、今戻ったが・・・」
・・・ハロルド達とルーク達の再会により談話も終わり、ハロルド達を見送ろうと玄関に来たルーク達。そこで玄関より現れた公爵にルークが声をかけるが、その視線は後ろにあたクラトスに向けられていた。
「・・・クラトス、帰るところすまぬが少し私に付き合ってはもらえぬか?」
「・・・私は構いません。すまないが少し待っていてくれ、二人とも」
「分かったわ~」
そのまま意を決して話をと切り出す公爵にクラトスはすぐに頷き、ハロルド達も待つと頷く。
「ではこちらに来てくれ・・・」
了承を得られた事で公爵はクラトスに付いてくるよう言い、その後を素直に付いていく・・・










4/6ページ
スキ