必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「で、落ち着いたのか?子供達は?」
「あぁ・・・今はぐっすりと寝ている。元気だよ、子供というものは。私自身時折羨ましくなるよ、小さな体に秘められたその体力をね」
ジゼルの了承も得られ子供達につい聞くルークに、ウッドロウは微笑みながら疲れたと返す。
「・・・ただ、こうやって再び集まると思うな。もしヴァン率いる神託の盾に私がいて、目論見が達成されたらどうなったのだろうと・・・」
「・・・もしレプリカ大地計画が成功したら、ですか・・・」
「・・・多分今のように穏やかな生活なんて到底出来るはずもないって俺は思うぜ。何せ預言に操られた世界を壊して新たな世界を作ろうとしてんだから、それを形として為す為には相当な苦労が必要だろ?んでそこで指揮を取るのは謡将がレプリカを見下してたってのもあって、シンクは例外になるにしても謡将達がやる以外にない。そんな時にリグレットとして子供を生んだとしたならまともに教育を施せるとは思えないから、予想出来る所としちゃレプリカへの差別観念に凝り固まって優位種発言したり暴力を平気で振るえる人間になってたんじゃねぇかな?その子供は」
「それは・・・いや、おそらくそうだろうな・・・自分が賢いと思い、レプリカをその存在だと言うだけで愚かと断じていただろう。そしてその意識は次代の子供達にも・・・・・・今思えばなんと恐ろしく、周りを省みない計画とヴァンに賛同していたのだろうな私は・・・」
「・・・ジゼルの言うこと、今思うとアリエッタも怖いです・・・もし謡将達に従ってたらって思うと・・・」
そこでふとヴァンの元にずっといて計画が完遂されたらと表情を固くしリグレットが口にすれば、ルークがかなりの現実味を帯びた推測を返しジゼルだけでなくアリエッタまでもが表情を暗くする。
「・・・ま、考えることが無駄とは言わねぇよ。でももう終わった事なんだ。預言に発端するこの世界の迷走はな。そのもしもに引っ張られて暗い顔をするなよ。そんな顔で俺ら以外の奴・・・特にあの子達の前に会えると思うか?」
「っ・・・すまない、お前の言葉で眼が覚めた・・・そうだ、今の私にはあの子達がいるんだな・・・」
「あの子達だけ、ではないでしょう?ウッドロウさんもいるではありませんか、貴女には」
「なっ!?」
「ふふ、イオン君の言う通りだ。それとも私は君の心の中では大したことない存在なのかな?だとしたら少し悲しいが・・・」
「い、いや!そんなことはない・・・私にとってウッドロウはその、子供達と同じように大切な存在だ・・・!」
「それはよかった」
「クスッ・・・かわいいです、ジゼル」
ルークはそんな姿に優しく子供達の事を思い出させるよう問いを投げ掛け、ジゼルもハッとして微笑を浮かべるがイオンの言葉に一気に顔を赤く染める。更にウッドロウが悲し気に表情を変え言葉を上げると慌ててその言葉を愛ある言葉で恥ずかしげに否定し、笑顔になるウッドロウにアリエッタ。いやそれはルークにイオンも同様だった。



(・・・変わるものだな、ジゼルもだがウッドロウも・・・)
・・・そんな中一人、沈黙を保っていたイクティノスはウッドロウの腰元でしみじみと感慨にふけっていた。
(ウッドロウからあの後についての話を聞いた時は結局かと思いもしたが、あれはあれでウッドロウらしいと思いもした・・・だがこの世界に来たことでウッドロウも変わった、クラトス達のおかげもあってな・・・おそらく彼らがいなければウッドロウは変わることがないまま今この場にいただろうな、ジゼルとも結ばれることもなく下手をすればこのような円満な状況に至ることもなく・・・)
イクティノスはその原因を今はここにおらず、元の世界に帰ったクラトス達と考えていた。








48/50ページ
スキ