必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「・・・悪いサフィール、もう今日は戻ってくれ。お前の言葉は納得は出来たが、具体的にどうするかは今から色々考えたい・・・流石に今すぐ結論を出すというのは勢いに任せすぎで無責任だと思うからな」
「・・・そうですね。勢いに任せてと言うのは確かに避けていただきたい所です」
「あぁ・・・どうするか決めたならもう一度お前をここに呼ぶ。それまでは仕事に従事していてくれ」
「わかりました・・・では失礼します」
と、ピオニーはふと頭を振って短慮はするべきではないと冷静に考えたいとサフィールに切り出す。サフィールもその考えに納得して頷き、ピオニーが呼び出すまで待てと行ったことに了承を返して頭を下げて部屋を出ていく。
「・・・・・・次代の為に、か・・・その事から目を反らしてはならないのは分かる。事実本当にそうしなければならないのは俺にももう分かった・・・だが意外とルークと導師の二人も歳の割に、と言うのもなんだがこんな搦め手を使ってくるとはな・・・」
そして一人残ったピオニーは先程の話を苦く噛み締め強く実感をするが、その反面でルークとイオンの行動を搦め手と表現する。
「サフィールは話を聞いて真剣にマルクトの事を想い、俺に話をしようと思ったのだろう・・・だがあの話がサフィールからではなく両者から話をされていたら、俺は素直に話を受けていれたか?・・・おそらくまず無理だろうな。今の地位の二人が俺と内密に話をするにも手紙を出すなど出来るはずがない。今の二人では重臣の介する場でなければまず会うことは出来ないだろう上、あの話の中身はマルクトへの内政干渉と取られても全くおかしくはない。そしてその時は臣下達も常日頃言っている事ではあっても素直には勧めを受け取る事は難しいだろう・・・その点サフィールを使えばそういったしがらみを切り抜け俺に意見を通すことも出来るし、これは俺の考えた事だとも言えるし何より心に直接訴えかける事を鮮明に伝えられる。二人が願うマルクトの平穏の為の手だてをな・・・サフィールはそのつもりはなかっただろうが、二人はまんまと成功させたよ・・・俺への警告を告げるという搦め手はな」
それで何故搦め手と思ったのかをしみじみ一人で語り、ピオニーは自嘲気味に笑い成功と漏らす・・・いかに否定したかろうともそれが出来ない程の現実味に満ちており、ピオニーの性格から考えても話を突っぱねる事が出来ない物であったために。
「・・・サフィールにはあぁ言ったが、俺には結婚する以外の選択肢はないだろうな。マルクトの政治の在り方を今から一変するための案を考えるにしても時間がないし、ルークを見習い民主政治に移行するとなれば二番煎じと言われかねんし比較はいやが上にでもされるだろう。領土を含めた様々な違いが両国にあるにも関わらず、だ・・・そうなればロクに考えがなく後追いをする俺の方が遥かに不利で、とてもマネをするなどという賭けには出られんだろうな。マルクトの事を考えれば・・・」
そこまで漏らすとピオニーは自分の取るべき行動は結婚以外にないと、苦み走った表情でルークの真似をして民主政治に移行した時の不利を口にする。
「・・・覚悟、しなければならないか。マルクトの為にも・・・今まで結婚はしたくないとその勧めを否定してきたが、本当にマルクトの事を思うなら結婚しなくてもいいような体制を作るべきだったんだろうな。だがそう出来なかった以上、俺もやるべき事はやらなければな・・・マルクトや世界の為にも・・・その為にはネフリーへの想いはもう捨てざるを得ないな・・・」
そんな状況が見えているからこそピオニーは逃げることは許されないと自分にも原因があると言い、覚悟をしようと漏らす。だがその顔にはネフリーへの気持ちを引きずっていると言葉にしているよう、過去への後悔に溢れた暗い物であった・・・












・・・数日後、ピオニーはサフィールを呼び出しその間に煮詰めた自身の結論を明かした。そしてその後、ピオニーより臣下に結婚に踏み切るとの意志が発表された。



・・・そしてこの後から、オールドラントは今までになく大きく揺れ動いていく事になる。








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